花苔
summer 植物

花苔

はなごけ

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意味・由来

「花苔(はなごけ)」は、夏の季語で、コケ植物の胞子嚢(ほうしのう:胞子が入っている袋)が伸びて、まるで小さな花が咲いたように見える様子を指します。あるいは実際に「ハナゴケ」と呼ばれる、先端に鮮やかな赤や黄色のコップ状の構造を持つ地衣類を指すこともあります。梅雨時から夏にかけての湿潤な気候のなか、水分をたっぷりと吸い込んだ苔が、一斉に胞子嚢を立ち上げる姿は、小さくも力強い生命力を感じさせます。湿った石垣や庭、寺の境内などでひっそりと輝く、ミクロの美しい世界を表現する季語です。

この季語で詠むコツ

花苔を詠む際は、カメラのレンズを極限まで近づけるように「クローズアップの視点」を持つことが大切です。その小さな「花」の赤や黄、緑といった色彩、繊細な形、そして朝露や雨の雫をまとった瑞々しさに注目しましょう。また、周囲の広大な自然(大木や古い岩、静かな境内など)との「大小のコントラスト」を意識すると、花苔の健気さと美しさがより一層際立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 水や湿り気を示す言葉:打ち水、雨上がり、雫、岩清水、朝露、湿り
  • 静寂や厳かな場所:石仏、古寺、杉の根、庭石、手水鉢(ちょうずばち)
  • 光を繊細に捉える言葉:木漏れ日、日の斑(ひのふ)、木陰、微光、こぼれ日

花苔」の俳句例 (3件)

花苔や水うちすぎてなほ涼し
飯田蛇笏【現代語訳】庭の花苔に打ち水をしたが、その水が引いた後も、なおいっそう心地よい涼しさが辺りに満ち満ちていることだ。 【鑑賞】夏の暑い盛りに、日陰 of 苔に打ち水をした光景です。水分を吸って生き生きとした表情を見せる花苔の様子と、打ち水によってもたらされた、ひんやりとした涼気が、読者の肌に直接伝わってくるような瑞々しく清涼感あふれる一句です。
花苔や日のあたりゐる杉の根もと
高浜虚子【現代語訳】杉の根元に、木漏れ日の光が優しく差し込んでいる。そこには、静かに息づく花苔が、まるで小さな星のように美しく広がっていることだ。 【鑑賞】薄暗い杉林の中で、ある一本の杉の根元にだけふっと日の光が当たっている厳かな情景を捉えています。その光に照らし出された「花苔」の繊細な美しさが際立ち、深い静寂の中に潜む、自然の神秘的な生命力を感じさせる名句です。
花苔やみ仏の足を洗ふ水
水原秋桜子【現代語訳】み仏(石仏)の足元を洗い流す清らかな水が、あたりに生い茂る花苔を優しく濡らしていることよ。 【鑑賞】寺の境内や、路傍に佇む石仏の足元に咲く花苔を描いた句です。「み仏の足」という尊い存在と、それを清める冷たい水、そしてその水を得て生き生きと輝く花苔の緑が美しく調和し、静謐で清らかな信仰の空間を浮かび上がらせています。

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