「燕」 の検索結果: 計 27件
もろつばめ
意味・由来 「諸燕(もろつばめ)」とは、春に南の国から群れをなして渡ってきたり、青空を一斉に飛び交ったりしている燕たちのことを指す春の季語です。「諸(もろ)」という言葉には「数多く」「そろって」という意味が込められており、単に一羽や二羽が飛んでいるのではなく、たくさんの燕が賑やかに乱舞する躍動感あふれる情景を表します。厳しい冬を越えて巡ってきた春の生命力と、自然の活気を象徴する風情豊かな言葉です。 この季語で詠むコツ 多数の燕が空を舞う「群れとしての動き」や「空間の広がり」を意識して描写するのが上達の近道です。例えば、川原や海、開けた田畑、青空といった雄大な背景と取り合わせることで、燕たちの俊敏な飛翔やスピード感がより鮮明に引き立ちます。単に「たくさん飛んでいる」と説明的に詠むのではなく、風の感触、水面のきらめき、交わし合う鳴き声などを具体的に捉え、春の光の中に満ちる動的な美しさを切り取ってみましょう。 相性のいい言葉・取り合わせ 青空、春風、川瀬、波頭、水鏡、光、羽音、潮風、飛翔、茜雲
はりおあまつばめ
意味・由来 針尾雨燕(はりおあまつばめ)は、初夏に日本へ渡ってくるアマツバメ科の夏鳥です。名前に「燕」と付きますが、一般的なツバメとは科が異なり、尾羽の軸の先が針のように硬く突き出ていることからその名が付けられました。鳥類の中でも屈指の飛行速度を誇り、平地よりも主に山岳地帯や森林の上空を、目にも留まらぬ速さで滑空しながら空中の虫を捕食します。 この季語で詠むコツ 人里近くを飛び交う身近なツバメと異なり、針尾雨燕は深山や高山を猛スピードで飛翔する野性味が魅力です。詠む際には、その圧倒的な飛行速度や、風を切り裂くような鋭さを表現するのがコツです。切り立った岩壁や谷、吹き上げる山風など、険しく壮大な夏の自然と取り合わせることで、一瞬の閃光のように大空を駆け抜ける鳥の力強さが際立ちます。 相性のいい言葉・取り合わせ ・山や空を表す言葉:青嶺(あおね)、高嶺(たかね)、断崖(だんがい)、雲海(うんかい) ・動きや感覚を表す言葉:疾風(はやて)、風を裂く、矢の如し、瞬く間 ・自然の情景:滝(たき)、谷深し、岩肌
すだち
意味・由来 「巣立(すだち)」は初夏から夏にかけての季語です。春に孵化した燕や雀などの小鳥の雛が成長し、初めて翼を広げて巣から飛び立ち、自立していく様子を指します。親鳥の懸命な子育てが実を結ぶ喜ばしい瞬間であると同時に、親鳥のもとを離れていく切なさや、雛が初めて大空へと挑む初々しさと危うさが感じられる、生命力あふれる季語です。 この季語で詠むコツ 雛鳥のぎこちない羽ばたきや、励ますように鳴く親鳥の声など、具体的な鳥の動きや鳴き声に着目すると生き生きとした句になります。また、鳥そのものだけでなく「空になった巣」や「急に静まり返った軒先」といった周囲の光景の変化を描くことで、巣立ちの後の余韻や寂しさを情緒豊かに表現することができます。人間の旅立ちや成長の姿を重ねて詠み込むのもおすすめです。 相性のいい言葉・取り合わせ ・青空(あおぞら)、青葉(あおば)などの夏の自然の言葉 ・軒端(のきば)、庭先(にわさき)、電線(でんせん)などの生活の場 ・風(かぜ)、朝光(あさひかり)などの情景を描く言葉
おやつばめ
意味・由来 「親燕(おやつばめ)」は、初夏から夏にかけて、巣で待つ雛のためにせわしなく餌を運ぶ親鳥の燕を指す夏の季語です。春に南方から渡ってきた燕は、初夏になると民家の軒先などに巣を構え、産卵と育児に追われます。単に飛ぶ燕を捉えるのではなく、「親」という名をつけることで、小さな命を育てるための献身的な姿や、生命力あふれる家族の情景が色濃く描き出されます。 この季語で詠むコツ 親燕の目まぐるしい働きぶりや、空を鋭く切り裂くような飛翔の勢いを捉えるのがポイントです。黄色い口を開けて待つ雛たちとのやり取りや、餌となる虫を求めて水面や田の上をすれすれに飛ぶ姿、泥や藁をくわえて往復する様子などを具体的に描きましょう。親鳥の健気さに情を寄せすぎず、スピード感や初夏の光、乾いた風などの情景と取り合わせることで、生き生きとした夏の命の輝きが引き立ちます。 相性のいい言葉・取り合わせ 軒下、土壁、古梁、嘴(くちばし) 旋回、急降下、影 炎天、夕風、青葉、水面
なつつばめ
意味・由来 「夏燕(なつつばめ)」は、初夏から夏本番にかけて見られる燕の姿を指す夏の季語です。燕そのものは春に南方から日本へ渡ってくるため、単に「燕」と詠むと春の季語になります。しかし、夏になると本格的な子育てが始まり、雛に餌を運ぶために親鳥が忙しなく飛び交い、やがて巣立ちを迎えます。青空や水田の上を矢のように鋭く飛び回る姿には、春の燕よりも一層力強い生命感やスピード感、夏の光の眩しさが感じられます。 この季語で詠むコツ 春の燕が持つ「渡来の喜び」や柔らかい風情とは異なり、夏燕では「生き生きとした躍動感」「育雛のひたむきさ」「夏のまぶしい日差し」を意識して捉えるのがポイントです。空の高さや日差しの強さ、水面をかすめて急旋回する素早い動きなど、視覚的なスピードや力強さを言葉に写し取ると夏燕ならではの情景が立ち現れます。 相性のいい言葉・取り合わせ ・情景を広げる言葉:青空、青田、水面、川波、軒先、土壁 ・動きや感覚を表す言葉:急旋回、影落とす、餌運ぶ、風切る ・夏の風物や季語:夕立、南風、青嵐、入道雲
さとつばめ
意味・由来 「里燕(さとつばめ)」とは、春に南の国から渡ってきて、人の暮らす里や町中の軒先などに巣を作る燕のことです。山や岩場などに生息する山燕(やまづばめ)などと区別して、古くから人間の生活圏に親しみ深く寄り添ってきた燕を、親愛の情を込めてこう呼びます。民家の軒下を行き交い、泥や枯草を運んで甲斐甲斐しく巣を作る姿は、春の訪れと里の穏やかな日常を象徴する風物詩です。 この季語で詠むコツ 単に飛んでいる燕を描くのではなく、「里」という言葉が持つ「人の気配」や「生活の温かみ」を意識して詠むのがポイントです。古い町並み、商店街の軒端、郵便受け、土間など、人々の暮らしの情景と取り合わせることで、里燕の愛らしさや健気さがより際立ちます。また、素早く軽やかな飛翔の動感と、のんびりとした里の春の静けさとの対比を意識すると、立体感のある句に仕上がります。 相性のいい言葉・取り合わせ ・軒端(のきば)、軒下、土壁 ・街道、宿場、古道 ・夕餉(ゆうげ)、子どもの声、下校 ・春風、春泥(しゅんでい)、浅黄空(あさぎぞら)
とおしつばめ
意味・由来 「通し燕(とおしつばめ)」とは、秋になっても南の暖かい国へ渡らず、日本に留まって冬を越す燕のことです。「越冬燕」や「冬燕」とも呼ばれます。本来、燕は春に海を渡って飛来し、夏に子育てをして秋に去る代表的な夏鳥ですが、何らかの理由で旅立てず、日本の厳しい冬を生き抜こうとする燕がいます。寒空のもとで健気に生きるその姿に、昔の人々は深い憐れみと驚きを抱き、冬の季語として詠み継いできました。 この季語で詠むコツ 春や夏に見せる軽快で滑らかな飛び方とは異なる、寒さに耐え忍ぶ姿や懸命な命の重みを表現することが大切です。春の燕のような華やかさや生命の喜びを描くのではなく、寒風に吹かれながら餌を探す姿や、軒下の古巣で丸くなって暖を取る様子など、冬ならではの厳しさや切なさを捉えてみましょう。燕の存在を通して、冬の冷たさや孤独感、あるいはそれに立ち向かう命の逞しさを際立たせることができます。 相性のいい言葉・取り合わせ 寒さや荒涼とした情景を強調する言葉とよく響き合います。 ・天候や風物:鉛色の空、木枯、寒風、波頭、枯野、日溜まり ・場所や佇まい:軒下、波止場、電線、廃屋 ・状態や動作:羽づくろい、じっと耐える、低く飛ぶ、身をすぼめる このように、冬の厳涼な風景や燕の痛々しいほどの小ささを対比させると、詩情豊かな一句に仕上がります。
ついりぐもり
意味・由来 「ついり」とは「梅雨入り(つゆいり)」が変化した言葉であり、栗の花が落ちる頃に梅雨に入ることから「墜栗花(ついり)」の字を当てることもあります。「ついり曇」は、その梅雨の季節特有の、空一面が低く重たい雲に覆われた鬱陶しい曇天を指す季語です。「梅雨曇(つゆぐもり)」と同じ意味を持ちますが、どこか古風で雅やかな調べと、やわらかな風情を感じさせる言葉です。 この季語で詠むコツ 単に「どんよりとして暗い」という気持ちをそのまま言葉にするのではなく、梅雨時ならではの濃密な湿気や空気の重さ、微かな光の陰影に目を向けるのが上達のコツです。雨が降り出す直前の独特の静けさや、水蒸気を含んだ生温かい風、湿り気を帯びた部屋の匂いなど、五感で捉えた情景を取り合わせることで、実感がこもった奥行きのある句になります。 相性のいい言葉・取り合わせ ・触覚や空気感を表す言葉(湿る、重たき、肌にまとわりつく、生温き) ・日常や室内の描写(窓硝子、古書、格子戸、湯呑み) ・夏の自然や生き物(青葉、若竹、苔、蝸牛、燕)
こやすがい
意味・由来 子安貝(こやすがい)とは、タカラガイ科の巻き貝の総称であり、春の季語です。丸みを帯びた滑らかな陶器のような美しい光沢を持ち、古くは中国などで貨幣としても用いられました。その形状が女性の産門に似ていることから、日本では古くから安産のお守りとして大切にされてきました。『竹取物語』でかぐや姫が求婚者に課した難題の一つ「燕の子安貝」でもよく知られています。春の浜辺に打ち寄せられた貝を拾い集める風情や、生命の神秘、母の愛を象徴する貝として愛されています。 この季語で詠むコツ 子安貝の持つ「つややかで丸みのある質感」や「手のひらに収まる愛らしさ」、そして「安産祈願・子宝の象徴」としての側面を活かすと魅力的な句になります。浜辺で貝拾い(桜貝や貝寄風など春の海辺の情景)を楽しむ情景として詠むのはもちろん、小箱や掌に収めて大切に愛でる仕草、あるいは母や子への慈しみの感情を重ねて詠むと、深みのある一句に仕上がります。形や手触り、色合いの描写に焦点を当てると実感がこもります。 相性のいい言葉・取り合わせ ・掌(てのひら)、指先、小箱、机上 ・白砂、砂浜、寄せる波、潮騒 ・春の海、うららか、春光、貝寄風(かいよせ) ・祈り、安産、産着、母の手
すずめのす
意味・由来 春を迎えると、雀たちは繁殖のために民家の軒下や屋根瓦の隙間、換気口、庭木の茂みなどに巣を作ります。これが「雀の巣」であり、仲春から晩春にかけての季語です。燕のように泥で目立つ巣を作るのとは異なり、枯草や藁、鳥の羽毛などをせっせと隙間に詰め込んで作られます。人の暮らしのすぐそばにありながら、少し隠れた場所に作られることが多く、古くから人々の日常に寄り添う春の風物詩として親しまれてきました。 この季語で詠むコツ 雀は人間の生活圏を巧みに利用して子育てをします。そのため、日々の暮らしのぬくもりや、下町の風景などと取り合わせると情景が鮮やかに立ち上がります。屋根の隙間から細い藁がはみ出している様子や、小さな口に草をくわえてせわしなく行き来する親鳥の健気さ、巣の中からかすかに漏れる雛の気配など、具体的で小さな発見を言葉にすることが大切です。少し不恰好ながらも力強い生命の営みを優しく見守る視点で詠んでみましょう。 相性のいい言葉・取り合わせ ・生活感を表す言葉:軒端、古瓦、雨樋、物干し竿、路地 ・巣作りの様子を描く言葉:藁くず、羽毛、小枝、朝の光 ・春の気配を重ねる季語:春風、春日、囀り、うららか
つばめさりづき
意味・由来 「燕去月(つばめさりづき)」とは、陰暦八月(現在の8月下旬から10月上旬頃・仲秋)の異称です。春に南方から日本へと渡ってきて子育てを終えたツバメたちが、再び南のあたたかい島々へと群れをなして旅立っていく月であることから名付けられました。単に月日を表すだけでなく、空を見上げて渡り鳥の別れを惜しむ、どこか哀愁と爽やかさが入り混じった季節感を漂わせる風情ある時候の季語です。 この季語で詠むコツ 「燕」という生き物の名前が入っていますが、分類としては「時候」の季語になります。そのため、必ずしも目の前に飛んでいるツバメの姿を描く必要はありません。ツバメたちが去った後のぽっかりと空いた軒下の「古巣」、あるいは高く澄み渡った秋の青空、少し肌寒さを感じ始めた風など、ツバメの「不在」を通して秋の深まりや寂寥感を表現するのが効果的です。また、去りゆく鳥を見送る旅情や人生の別れと重ねて詠むのも味わい深くなります。 相性のいい言葉・取り合わせ ・空や雲に関する言葉(「秋晴」「夕茜」「白雲」「高空」など) ・静けさや余韻を表す言葉(「古巣」「日暮」「風音」「もぬけ」など) ・生活や港・海の情景(「潮騒」「軒端」「旅」「岬」など)
しゃえん
意味・由来 「社燕(しゃえん)」とは、春の社日(春分に最も近い戊の日)のころに南方から渡ってくるツバメのことです。中国の古い伝承において、燕は春の社日にやってきて、秋の社日に去っていくと信じられていたことに由来します。単に「燕」と詠むよりも、古き良き神社の厳かな雰囲気や、春の農耕の始まりを告げる神聖な響きを帯びるのが特徴です。 ### この季語で詠むコツ 単に鳥としてのツバメの素早い動きを写生するだけでなく、神社の境内や鳥居、拝殿といった神聖な場所が醸し出す「静寂」や「時間の流れ」と取り合わせるのがコツです。古い木々、瓦屋根、玉砂利など、社ならではの落ち着いた色彩や質感と、社燕の瑞々しく軽快な飛翔のコントラストを意識してみましょう。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ 拝殿、参道(神路)、鳥居、玉砂利、大杉、風、影、春雨、ひねもす(終日)、朱(あか)など。
えんばく
意味・由来 燕麦(えんばく)はイネ科の越年草で、初夏に細い茎を伸ばし、涼しげに垂れ下がる穂をつけます。別名として「からすむぎ」や「オート麦」とも呼ばれます。小穂が二股に分かれてぶら下がる姿が、空を飛ぶ燕の尾羽に似ていることからこの名がついたと言われています。食用として親しまれるほか、古くから馬や牛などの飼料としても栽培されてきました。初夏の風に吹かれてさらさらと揺れる姿には、独特の素朴さと野趣があります。 この季語で詠むコツ 燕麦は麦類の中でも軽やかで繊細な風情を持っています。黄金色に実る重厚な麦畑とは少し異なり、高原や北海道などの広々とした牧草地、のどかな牧場風景を連想させるところが魅力です。詠む際には、風の動きや光の反射、または馬や山などの雄大な自然景観と組み合わせると、初夏のみずみずしさと爽快感が引き立ちます。穂が揺れる微細な音や、どこか哀愁を感じさせる素朴な佇まいに着目するのもおすすめです。 相性のいい言葉・取り合わせ ・牧場(まきば)、柵、サイロ ・高原、青空、白雲 ・風の音、そよ風、光 ・蹄(ひづめ)、馬の背、野道
えんしか
意味・由来 「燕脂花(えんしか)」は、オシロイバナ科の一年草であるオシロイバナ(白粉花)の別称、あるいはその深く鮮やかな紅紫色の花を指す秋の季語です。「燕脂(えんじ)」とは古代中国の燕の国から伝わった紅色の化粧料・染料のことで、オシロイバナの花がその艶やかな赤を連想させることから名付けられました。夕暮れどきに開き、翌朝にはしぼむ性質を持ち、古くから秋の夕景や路地裏の風情を彩る花として親しまれています。 この季語で詠むコツ 「白粉花」と詠むと黒い種や白い粉の親しみやすさが立ちますが、「燕脂花」と漢字で表記すると、どこか艶やかで雅びな美しさが際立ちます。夕暮れの光の中で際立つ深紅の艶や、しっとりとした陰影を意識して詠むのがポイントです。夕方の薄暗がり、雨上がりのしっとりとした風情、あるいは静かな路地裏などの情景と合わせると、季語の持つ妖艶さや哀愁が引き立ちます。 相性のいい言葉・取り合わせ 時間・光:夕暮れ、夕影、薄暮、たそがれ、残照 情景・場所:土塀、板塀、格子窓、古庭、路地、雨上がり 色・質感:濃紅、艶、しじま、ほのか、濡れ色
えっとうつばめ
意味・由来 燕は通常、春に日本へ渡ってきて子育てをし、秋になると南の温かい地域へと旅立つ夏鳥です。しかし、何らかの理由で群れから遅れたり、暖冬や餌の確保などの環境変化によって、日本に留まったまま冬を過ごす燕がいます。これを「越冬燕」と呼び、三冬の季語となっています。過酷な寒風や霜雪に耐えながら、春を待つ姿には、どこか痛々しさと力強い生命力の両面が感じられます。 この季語で詠むコツ 春の燕が持つ「軽やかさ」や「賑やかさ」とは対照的に、「寒さ」や「孤独」、「健気さ」に焦点を当てて詠むのが基本です。寒空を背景に一羽だけで低く飛ぶ様子や、軒下に体を寄せ合って羽を膨らませている姿など、具体的な情景を写生しましょう。冬の冷たさや厳しさを際立たせる言葉を置くことで、過酷な状況を生き抜こうとする燕の命の輝きが鮮やかに浮かび上がります。 相性のいい言葉・取り合わせ ・情景を深める言葉:軒、庇、夕茜、鉛色の空、海鳴り、波頭 ・寒さを表す描写:木枯らし、凍てる、霜、寒風 ・燕の動きや様子:羽膨らます、低く飛ぶ、小さき影、ひそと居る
つばめうお
意味・由来 「つばめ魚(つばめうお)」は、主にトビウオの異称、あるいは暖海に生息するツバメウオ科の魚を指す春の季語です。大きな胸びれを広げて波間を軽やかに滑空する姿が、春に南の国から海を越えて渡ってくる燕(つばめ)を彷彿とさせることから、その名が付けられました。春の光を浴びながら青い海の上を滑るように飛ぶ姿には、冬の寒さが明けた季節ならではの躍動感と爽快さがあふれています。 この季語で詠むコツ 空を翔ける燕のイメージと、大海原を泳ぎ飛ぶ魚の生態が重なり合う、非常に詩情豊かな季語です。詠む際には、春の陽光がきらめく水面や、白く砕ける波のしぶきなど、光や水のリズムを意識すると鮮やかな情景が立ち上がります。「飛ぶ」「光る」といった直接的な動作だけでなく、水平線の広がりや潮の香りなど、五感を使った描写と取り合わせることで、春の海の開放感を生き生きと表現できます。 相性のいい言葉・取り合わせ ・春の海(はるのうみ)/春潮(しゅんちょう) ・波頭(なみがしら)/白波(しらなみ) ・飛沫(しぶき)/潮煙(しおけむり) ・蒼海(そうかい)/群青(ぐんじょう)
ふるす
意味・由来 「古巣(ふるす)」は、鳥たちが前年以前に作った古い巣のことを指す春の季語です。春になると、渡り鳥である燕が海を越えて戻ってきたり、雀などがかつて使っていた巣を手入れして再び産卵や子育ての準備を始めます。厳しい冬を越えて、再び命を育む場として蘇る巣の様子や、主を待つ空の巣の佇まいに、春の訪れと生命の循環、時の移ろいを感じ取ることができます。 この季語で詠むコツ 鳥が戻ってきて古巣を泥や藁で繕っている生き生きとした姿を捉えるか、あるいは鳥の姿が見当たらない静かな巣に春の光が差し込む情景を描くかで、句の風情が大きく変わります。「古巣」という言葉自体に過去の時間や懐かしさが宿っているため、過度に哀傷を強調せず、軒下や大梁、土壁といった具体的な場所の情景と淡々と組み合わせることで、かえって深い余韻を生み出すことができます。 相性のいい言葉・取り合わせ ・場所を表す言葉:軒下、梁(はり)、土塀、玄関、古寺 ・鳥の仕草・情景:繕ふ(つくろう)、戻る、見上ぐ、こぼるる土 ・春の気配:春風、春日(はるひ)、春雨、うららか
つばめわたる
意味・由来 「燕渡る」は、春に遠い南の海を越えて日本へと渡ってくる燕の姿を表す春の季語です。秋に南の国へと帰っていく「燕帰る」と対をなす言葉であり、厳しい冬の終わりと、新しい季節の幕開けを実感させてくれます。荒波を越えて小さな身体ひとつで海を渡り、私たちの住む街や里へ帰ってくる燕には、春ならではの生命力や希望が宿っています。 この季語で詠むコツ 小さな命と、広大な海や空との対比を意識して描くのが効果的です。海原をひたすら飛んできた疲労感やひたむきさ、ようやく見えた陸地への安堵など、鳥の視線や気配に寄り添ってみましょう。「燕」単体で詠むときよりも、旅や移動のスケール感が強くなるため、岬や灯台、波のきらめきなど、海辺の風景を取り合わせると情景がぐっと広がります。 相性のいい言葉・取り合わせ ・春の海、潮風、白波、岬、灯台、島影(海辺や旅路の情景) ・青空、朝風、雲、光(春の広々とした大気) ・遥か、羽撃き、ひとすじ、影(燕の力強い飛行を捉える言葉)
あまつばめ
意味・由来 雨燕(あまつばめ)は、三日月形の細長い翼を持ち、猛スピードで空を飛び回る渡り鳥です。名前に「燕」とついていますが、一般的なツバメとは異なるグループに属し、足が極めて短いため地面に降りることは滅多にありません。天高く飛ぶことから「天燕」、あるいは雨が近づくと湿気で低空を飛ぶ虫を追って降りてくることから「雨燕」と呼ばれるようになったとも言われています。春の訪れとともに日本へ渡ってきて、断崖絶壁や高層建築の隙間などに巣を作ります。 この季語で詠むコツ 普通のツバメよりもさらに鋭く、風を切り裂くような圧倒的な飛翔力と速さを捉えるのがポイントです。「雨燕」という漢字が持つ特有の陰影を生かし、今にも雨が降り出しそうな曇天や春の雨雲を背景に置くと、その素早い羽ばたきが鮮やかに際立ちます。地上からの視線だけでなく、断崖や谷、都会の高層ビルの間を矢のように滑空するダイナミックな空間の広がりを意識して詠んでみましょう。 相性のいい言葉・取り合わせ ・春の気象の言葉(春嵐、春の雲、春雷、春雨など) ・空や風の描写(曇天、雲低し、風の尖り、天の群青など) ・動きや形状を表す言葉(刃の如し、切り裂く、一閃、高嶺、断崖など)
はるのかわなみ
意味・由来 「春の川波」とは、春の光を受けながら、あるいは雪解け水を含んで豊かに流れる川に立つ波のことです。冬の間の凍てつくような冷たく硬い水流から解き放たれ、どこか柔らかく、明るい輝きを帯びた水面の表情を表します。春風に揺れる細やかなさざ波や、水かさを増して岸辺を洗う勢いのある波など、春の訪れとともに生命力を取り戻した川の息吹を感じさせる季語です。 この季語で詠むコツ 冬の波との違いである「光」「温もり」「水の量感」を意識して描写するのが上達の近道です。ただ「綺麗だ」と詠むのではなく、川波が小石や岸辺をどのように濡らしているか、日差しを浴びてどのような色に輝いているかといった具体的な視覚や聴覚の情報を捉えましょう。また、川そのものだけでなく、川原の風景や人の営みと取り合わせることで、長閑さや春の躍動感がより鮮やかに引き立ちます。 相性のいい言葉・取り合わせ ・光や動きを表す言葉(きらめき、ゆらぐ、ひかる、岸を打つ、ほどく) ・川辺の情景(小石、土手、渡し舟、川原、橋の影) ・春の季語(菜の花、葦の芽、春光、陽炎、燕)