逃水

逃水

にげみず

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意味・由来

逃水(にげみず)は、春の暖かく晴れた日に、風がなく穏やかな屋外で、前方のアスファルトや地面に水がたまっているように見える現象です。近づくと前方へ逃げるように消えてしまうことからこの名がつきました。科学的には光の屈折による蜃気楼の一種ですが、古くは武蔵野の広大な原野で見られる風物詩として知られ、和歌や俳諧の時代から「春の季語」として親しまれてきました。

この季語で詠むコツ

逃水は「実体がないのにそこに見える」という幻想的な性質を持っています。そのため、目の前の現実の風景を描写しつつも、どこか寂しさや焦燥感、浮遊感を漂わせる句が生まれやすいです。車を運転しているときや、どこまでも続く一本道を歩いているときの「目的地にたどり着けない感覚」や「距離感」を、自身の心情に重ねて表現してみると良いでしょう。

相性のいい言葉・取り合わせ

・道や移動を表す言葉(アスファルト、自転車、国道、歩行、果て) ・視覚や感覚を揺さぶる言葉(まぼろし、揺れる、乾く、消え去る、淡い)

逃水」の俳句例 (4件)

逃水の果は海なる大和路
逃水やどこまで行けば土の道
川端茅舎【現代語訳】前方にゆらゆらと水がたまっているように見える逃水。この近代的なアスファルトの道を、一体どこまで歩いていけば、温かみのある懐かしい土の道にたどり着くのだろうか。【鑑賞】近代化によって急速に舗装されていく道路への戸惑いと、その上でどこまでも逃げていく水の幻影に対する、哀愁に満ちた写生が光る名句です。
逃水のどこかで途切るハイウェイ
阿部みどり女【現代語訳】高速道路のはるか前方にゆらめいていた逃水が、スピードを上げて進むにつれて、ある瞬間にふっと途切れて消え去ってしまった。【鑑賞】現代的な「ハイウェイ」というスピード感あふれる舞台と、古典的な蜃気楼である「逃水」を取り合わせることで、乾いた現代都市の叙情を見事に表現しています。
逃水や武蔵野いまも一里づつ
安住敦【現代語訳】かつて武蔵野の名物とされた逃水が、開発の進んだ今でも、一里歩くごとにその先へと現れては逃げていく。【鑑賞】古来、武蔵野の広大な野原の象徴であった逃水を通して、かつての武蔵野の面影を現代に重ね合わせ、尽きない旅情と郷愁を詠み込んでいます。

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