春きざす
spring 時候

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意味・由来

「春きざす(春兆す)」は、暦の上ではまだ冬でありながら、日差しの明るさや風の感触、大地の様子などに、ふと春の訪れの兆候が感じられる様子を表す季語です。厳しい寒さのなかにあって、自然界の微細な変化に敏感に気づく日本人の繊細な美意識から生まれました。目には見えない季節の足音を、心と体で受け止める喜びが込められています。

この季語で詠むコツ

まだ周囲は冬枯れの景色であるため、大きな変化ではなく「かすかな兆し」に焦点を当てるのがコツです。日差しが少し柔らかくなったこと、風のなかにほんの少し湿り気が混ざったこと、あるいは庭の土が少し緩んだことなど、五感を研ぎ澄まして捉えた具体的なディテールを描写すると、季語の持つ繊細さが引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

光や水、風といった自然の要素と非常に相性が良いです。また、「水温む」前の冷たい水や、寒さの残る「影」「土」など、冬のなごりを感じさせる言葉と取り合わせることで、冬から春へと移り変わる瞬間のドラマを表現しやすくなります。日常のささやかな変化を表す「窓」「道」「音」などもおすすめです。

春きざす」の俳句例 (3件)

春きざす障子の穴の青き空
芝不器男【現代語訳】ふと見ると、古びた障子にぽつりと空いた小さな穴から、澄み切った青空がのぞいている。その鮮やかな青さに、確かに春の兆しが感じられることだ。【鑑賞】破れた障子の穴という日常の卑近な景から、無限に広がる大空へと視線を誘い、そこに「春の兆し」を見出した名作です。障子の白と空の青のコントラストが鮮烈で、冬から春へと移り変わるかすかな光の変化を美しく捉えています。
春きざす水にそそぎて温き水
星野立子【現代語訳】春の気配が漂い始めた水の中に、さらに別のあたたかい水が注ぎ込まれて混ざり合っていくようだ。【鑑賞】「水にそそぎて温き水」という、一見すると当たり前のような水の動きを捉えることで、春がゆっくりと、しかし確実に世界を満たしていく様子を感覚的に表現しています。立子らしい、素直で繊細な観察眼が生み出した、命の温もりを感じさせる一句です。
春きざす山の一角崩れをり
前田普羅【現代語訳】春の気配がかすかに漂い始めたものの、目の前の大きな山の一角は寒さや風雪に耐えかねたのか崩れてしまっている。【鑑賞】普羅は自然の厳しさを深く見つめた俳人です。単に「春が来て嬉しい」というだけでなく、自然の破壊や厳しさという動的な変化の中に、新しく動き出そうとする大いなる「春の兆し」を読み取っています。静から動への変化のエネルギーを感じさせる力強い句です。

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