焼原
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焼原

やきはら

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意味・由来

「焼原(やきはら)」とは、春の初めに野山の枯れ草を焼き払う「野焼(のやき)」を行ったあとに残る、黒く焦げた原野を指す季語です。冬の間に枯れた雑草を焼くことで、害虫を駆除し、灰を良質な肥料として土に還元し、春の新しい草木の芽吹きを促すという、古くからの農耕・牧畜の知恵に由来しています。荒涼とした黒い大地は、一見すると死の世界のようですが、そのすぐ下には新しい生命がうごめいており、春の強い生命力や再生の予兆を感じさせる情景でもあります。

この季語で詠むコツ

焼原を詠む際には、単に「黒くて荒れている」という視覚的な描写にとどまらず、そこにある「色」や「温度」、「光」のコントラストを意識することがコツです。例えば、焦土の「黒」と、降り注ぐ春の「光」や「青空」、あるいは微かに芽吹き始めた若草の「緑」などを対比させると、画面が鮮明に浮かび上がります。また、まだ残る煙の匂いや、足元から伝わる大地のぬくもりといった五感を生かしたアプローチも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・色彩を強調する言葉:青空、日の光、若緑、白煙、陽炎 ・感触や温度を表す言葉:温し、風、足跡、匂う、かすか ・時間の経過や変化を表す言葉:夕日、暮るる、雨、明日

焼原」の俳句例 (3件)

焼原や道あるやうに人通る
小林一茶【現代語訳】草がすっかり焼き払われて黒一色となった焼原であるが、人々は以前からそこにあった道を知っているかのように、迷うことなく通り過ぎていくことよ。 【鑑賞】野焼きによって境界が失われたはずの広大な黒い大地。しかし、人々はかつての道筋を身体で覚えているのか、自然とそこを歩いていきます。荒涼とした大自然と、そこに生きる人間の生活の営みの対比が、一茶らしい温かみのある視点で描かれています。
焼原や石に腰かけて日の暮るる
正岡子規【現代語訳】野焼きが終わって黒々と広がっている寂しい焼原で、ぽつんと置かれた石に腰をかけて佇んでいるうちに、いつの間にか日が暮れていくことだ。 【鑑賞】あたり一面が黒い灰に覆われた静寂の世界の中で、一人石に腰掛けて静かに夕暮れを眺めている子規の姿が浮かびます。孤独感や寂寞感がありながらも、どこか心が落ち着くような、春の夕暮れの気配を静かに捉えた名句です。
焼原に立ちまじる日のひかりかな
飯田蛇笏【現代語訳】すっかり焼き払われた黒い原野に、春の暖かな日の光が降り注ぎ、混じり合うように美しくきらめいていることよ。 【鑑賞】黒々とした大地の「黒」と、春の陽光の「黄金色の光」が一体化しているかのような、ダイナミックで絵画的な一瞬を切り取っています。焼原が単なる死の土地ではなく、光を浴びて新しい命を育むための神聖な空間に見えてくる、蛇笏の豊かな感性が光る作品です。

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