年越蕎麦
winter 時候

年越蕎麦

としこしそば

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意味・由来

「年越蕎麦(としこしそば)」は、大晦日の夜に食べる習慣のある蕎麦を指す冬の季語です。江戸時代の中期頃から庶民の間に定着した風習とされています。蕎麦の麺が細くて長いことから「健康長寿」や「家運長命」を祈る意味が込められています。また、蕎麦は他の麺類に比べて切れやすい特徴があるため、今年一年の厄災や苦労、あるいは借金をきれいに「切り捨てる(断ち切る)」という厄除けの意味合いも持っています。

この季語で詠むコツ

年越蕎麦を詠む際は、大晦日という「一年の終わり」独特の空気感を意識することが大切です。家族で賑やかに食卓を囲む様子、あるいは一人静かに蕎麦をすする寂寥感など、シチュエーションによって様々な表情を見せます。また、蕎麦の湯気や香り、すする音などの五感に働きかけるディテールを描写することで、生活感と温かみのあるリアルな俳句に仕上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 時間や情景を表す言葉:除夜、深夜、更くる夜、大晦日、灯(ともしび)
  • 動作や感覚を表す言葉:すする、すする音、湯気、箸、熱き、柔らかに、ふきさます
  • 心情を表す言葉:安堵、安らぐ、しばし、旅ごころ、祈り

年越蕎麦」の俳句例 (3件)

年越の蕎麦をすするも旅心
渡辺水巴【現代語訳】旅先で食べる年越し蕎麦をすすっていると、なんとも言えない切なくも趣深い旅情が心に染み渡ってくることよ。【鑑賞】自宅ではなく、旅の途中で迎える大晦日の情景です。普段と違う場所で一人、あるいは宿で食べる年越し蕎麦。特別な節目の日だからこそ、いつもの蕎麦一杯をすする音の中にも、深い孤独と旅のロマン(旅心)が色濃く感じられる名句です。
年越の蕎麦吹きさますいとまかな
夏目漱石【現代語訳】年越しの蕎麦をフーフーと息を吹きかけて冷ましていると、ようやく忙しかった一年のすべての用事を終えて、ほっと一息つける静かな時間が訪れたことを感じるなぁ。【鑑賞】大晦日の慌ただしさをすべて片付け、除夜の鐘を前にしてようやく年越し蕎麦を食べる瞬間の安堵感を捉えています。蕎麦を「吹きさます」というささやかな動作に、時間的なゆとり(いとま)と心安らかな年の瀬の情緒が美しく表現されています。
年越の蕎麦やはらかく茹であがる
大野林火【現代語訳】大晦日の夜に食べる年越し蕎麦が、ちょうど心地よい柔らかさにふっくらと茹であがったことだ。【鑑賞】「柔らかく茹であがる」という非常にシンプルで日常的な描写の中に、家族を思いやる温かさや、無事に一年を締めくくることができる安堵感が満ち満ちています。特別な誇張をせず、生活の何気ない一コマから深い詩情を引き出した秀作です。

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