冬の蠅
winter 時候

冬の蠅

ふゆのはえ

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意味・由来\n「冬の蠅」は、冬になってもなお生き残っている蠅、あるいは冬の暖かさに誘われて、日の当たる障子や壁などに姿を現す蠅を指します。夏の蠅のようにうるさく飛び回るエネルギーはなく、寒さのために動きが鈍く、羽音も弱々しいのが特徴です。その哀れで、どこか愛嬌のある姿は、冬の寒さや寂寞感、さらには人間の老いや孤独、命の儚さを象徴する季語として古くから好まれてきました。\n\n### この季語で詠むコツ\n冬の蠅を詠む際は、その「動きの遅さ」や「弱々しさ」に注目することが基本です。夏には忌み嫌われる蠅ですが、冬の蠅に対しては、どこか親しみや哀愁、同情の念が湧いてきます。人間側の視点からの一方的な観察にとどまらず、蠅の動きに自己の境遇や、冬の暮らしの静けさを重ね合わせるように表現すると、深みのある句になります。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・障子、窓、日向、縁側などの「光や場所」を表す言葉\n・余命、机、畳、静けさなどの「孤独や静寂、時間」を感じさせる言葉\n・「すり合わせる」「這う」「落ちる」などの「鈍い動作」を表す動詞

冬の蠅」の俳句例 (3件)

冬の蠅にじりよりたる余命かな
村上鬼城【現代語訳】冬の蠅が、私のそばへにじり寄ってくる。その弱々しい姿は、私に残されたわずかな命(余命)そのもののようである。【鑑賞】病弱で不遇な人生を送った鬼城が、冬の冷気の中で這うように動く蠅に己の命の灯火を重ね合わせた、極めて哀切で深い共感を呼ぶ名句です。
冬の蠅己が手足をいつくしむ
加藤楸邨【現代語訳】冬の蠅が、寒さの中で自分の手足をすり合わせている。まるで、残り少ない命をいとおしむかのように、一生懸命に。【鑑賞】蠅が手足を擦り合わせる動作を「いつくしむ」と捉えた、作者の温かい眼差しが光ります。寒さに耐えながら生きる小さな生命への讃歌とも言える一句です。
冬の蠅逃げたるあとの光かな
渡辺水巴【現代語訳】そこにいた冬の蠅がどこかへ逃げ去ってしまった。そのあとに残されたのは、ただ冬の寂しい光ばかりである。【鑑賞】動きの鈍い冬の蠅がふと消えた瞬間、それまで蠅に集中していた視線が、取り残された陽射し(あるいは冬の光)へと移る。その静寂と一抹の寂しさを捉えた繊細な写生句です。

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