小麦冬
summer 時候

小麦冬

しょうばくとう

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意味・由来

「小麦冬(しょうばくとう)」は、初夏の季語であり、麦が黄金色に実り収穫期を迎える「麦秋(ばくしゅう)」や「麦の秋」の別称です。一般的には「麦の冬(むぎのふゆ)」とも呼ばれます。植物としての麦は、秋に芽吹いて冬を越し、初夏に実を結んで刈り取られます。麦にとっては、この実りの季節こそが一生の終わりである「冬」に相当することから、このように名付けられました。黄金色の美しい景色のなかに、どこか寂寥感を内包した奥深い季語です。

この季語で詠むコツ

「小麦冬」を詠む際は、初夏の光の強さと、麦畑が持つ乾いた「冬」のような質感を対比させることがポイントです。風にそよぐ麦の乾いた音、刈り入れ前の静けさ、あるいは遠くに見える山々など、視覚と聴覚を刺激する描写を取り入れると良いでしょう。「冬」という字面から受ける寒々しさと、実際の初夏の温かさや日差しのギャップを意識して詠むと、詩情が深まります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 動きや光を表す言葉(風、雲、陽射し、ひらひら、影)
  • 静けさや寂しさを表す言葉(ひえびえ、遠音、静寂、暮色)
  • 地形や自然の景観(富士、空、野、道、里)

小麦冬」の俳句例 (3件)

麦の冬風吹きおこる雲の端
飯田蛇笏【現代語訳】黄金色に実った麦の冬(小麦冬)の畑の上で、風が激しく吹き起こり、雲の端がちぎれるように流れていく。 【鑑賞】飯田蛇笏による、大自然のダイナミックな動きを捉えた名句です。「麦の冬」というどこか物寂しくも力強い季節感の中で、初夏の強い風が雲を押し流す様子が、写実的かつ重厚に描かれています。麦畑の黄金色と、空を駆ける雲の白やグレーのコントラストが目に浮かびます。
麦の冬富士ひえびえと天にあり
水原秋桜子【現代語訳】刈り入れを控えた黄金色の麦の冬の向こうに、雪を戴いた富士山がひんやりと冷ややかに天にそびえている。 【鑑賞】水原秋桜子の清澄な色彩感覚が光る一句です。初夏の明るい光に満ちた麦の冬(小麦冬)の野原と、遠く天高くそびえる富士山の冷徹な美しさが対比されています。「ひえびえ」という表現が、初夏の暑さの中に凛とした涼しさを呼び込んでいます。
麦の冬日のひらひらと障子かな
日野草城【現代語訳】麦が黄金色に枯れてゆく季節、開け放たれた部屋の障子に、初夏の日差しがひらひらと揺れ動いている。 【鑑賞】日野草城による、静かな生活のひとコマを切り取った繊細な句です。「麦の冬」という、外の広大な麦畑の気配を感じさせつつ、視線は室内の障子に当たる柔らかな光に向けられています。「ひらひら」という光の動きが、初夏の穏やかで心地よい時間の流れを表現しています。

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