荻吹く

荻吹く

おぎふく

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意味・由来

「荻吹く(おぎふく)」とは、秋風が荻(イネ科の多年草)の葉を吹き鳴らし、さやさやと音を立てる情景を指す三秋の季語です。荻はススキによく似ていますが、水辺や湿地に多く自生し、葉が擦れ合う音がより涼やかで寂しげな特徴を持っています。古来『古今和歌集』などの和歌でも「荻の葉風」「荻の声」として、秋の到来やもの寂しさを告げる風流な題材として愛されてきました。風そのものは目に見えませんが、葉が擦れ合う音や揺らめきを通して、秋風の冷たさや季節の移ろいを実感させる情緒豊かな季語です。

この季語で詠むコツ

「荻吹く」を詠む際は、聴覚(さらさら、さやさやという音)と視覚(水辺に揺れる葉や夕暮れの陰影)を巧みに結びつけるのがポイントです。荻が自生する川べりや沼地などの「水」の気配を取り入れたり、夕暮れや宵の口などの時間帯を描くことで、特有の哀愁や静けさが際立ちます。また、風が通り過ぎたあとの余韻や、旅情・孤独感を漂わせる描写とも相性が抜群です。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 水辺の景:川波、舟、入江、岸辺、水音
  • 時間・光:夕日、黄昏、月影、宵闇、暮色
  • 心情・様子:寂けさ、旅心、澄む、ひとり

荻吹く」の俳句例 (3件)

荻吹くや旅人去つて夕日濃し
高浜虚子【現代語訳】秋風が荻の葉をさやさやと吹き鳴らしている。さきほどまでいた旅人が立ち去り、残された夕日がひときわ濃く照り映えている。 【鑑賞】人が去った後の静寂と、夕日の鮮やかな光が鮮烈なコントラストを描いています。風に揺れる荻の音だけが響く水辺の情景から、旅の哀愁と秋の深まりがしみじみと伝わってくる名句です。
荻吹くやひとすぢ通る水の音
鈴木花蓑【現代語訳】荻の葉を秋風が吹き鳴らすなか、その音のすき間を一筋の水の流れる音が澄んで聞こえてくる。 【鑑賞】風にざわめく荻の擦れ合う音と、かすかに流れる水のせせらぎという二つの聴覚的要素を鮮やかに切り取っています。広がる風の音の中に「ひとすぢ」の清冽な水音が浮き彫りになり、秋の澄んだ空気感が見事に表現されています。
荻吹くや舟の行衛を誰れも知らず
正岡子規【現代語訳】荻の生い茂る岸辺を秋風が吹き抜けていく。そこから漕ぎ出していった舟がどこへ向かったのかは、誰も知らない。 【鑑賞】風に揺れる荻原の向こうへと消えていった小舟の行方に思いを馳せる一句です。水辺の広がりと秋風の寂寥感が相まって、どこか物語めいた幻想的な余韻を読者に残します。

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