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角川源義

かどかわげんよし

作風・特徴

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代表句 (20件)

一山の杉押しわけて幡祭り
季語: 木幡祭 (autumn)
【現代語訳】木幡山の一山を埋め尽くす鬱蒼とした杉の木立を、押し分けるようにして五色の大幡が力強く進んでいく、この壮大な幡祭りよ。【鑑賞】木幡の幡祭りのダイナミックな光景を、杉木立と鮮やかな幡の対比で見事に描き出した名句です。「一山の杉押しわけて」という表現が、山の急峻さと男たちの力強いエネルギーをまざまざと伝えています。
鬼城忌の風吹く街の雀かな
季語: 鬼城忌 (autumn)
【現代語訳】鬼城忌の今日、冷たい風が吹き抜ける街中に雀が一羽たたずんでいる。【鑑賞】鬼城が「生きのびてまた寒風に晒されむ」など小さき生き物を愛おしんだ句風を想起させます。街角の身近な雀に鬼城の厳しい境涯と温かな眼差しを重ね合わせています。
木酢や魚の骨の透き通る
季語: 木酢 (autumn)
【現代語訳】木酢をかけて味わう秋の魚は大変美味で、綺麗に食べ終えた魚の骨さえも透き通るように美しい。【鑑賞】旬の魚に木酢をかけて美味しく味わった満足感と、その爽快な風味を表現しています。「骨の透き通る」という鋭い写生により、木酢がもたらす酸味の美しさや食後の清々しさが際立っています。
既生魄月の出を待つ夜長かな
季語: 既生魄 (autumn)
【現代語訳】満月を過ぎてわずかに影が生じた月が上ってくるのを、秋の長い夜の中で静かに待っていることだ。 【鑑賞】「既生魄」という厳かな言葉を選ぶことで、ただ月を待つだけの時間が、秋の夜長に深く思索へ沈み込むような味わい深いひとときへと高められています。
逆峯の秋の空なる深さかな
季語: 逆峯 (autumn)
【現代語訳】水面に映る逆さの峰は、まるで秋の空そのものが持つ深さをそのまま映し出しているかのように深いことだ。【鑑賞】澄み切った秋の湖面に映る山の影を通して、秋空の果てしない透明感と深遠さを詠み上げた名句です。水底へと吸い込まれそうなほどの静寂と凛とした空気が表現されています。
休暇明けて海の色せる眼なりけり
季語: 休暇明 (autumn)
【現代語訳】休暇が明けて再会したその人の瞳は、まだ旅先の澄んだ海の色を宿しているようであった。\n【鑑賞】休暇を終えて日常に戻ってきた同僚や知人の姿を捉えた一句です。日焼けした肌だけでなく、瞳の奥に非日常の鮮やかな海の記憶を残している様子がロマンチックかつ鮮烈に描かれています。
暁星祭紺の制服あふれ合ふ
季語: 暁星祭 (autumn)
【現代語訳】暁星祭の校内には、生徒たちの端正な紺色の制服が満ちあふれている。 【鑑賞】暁星の象徴ともいえる伝統的な紺の制服に焦点を当て、若者たちが集い活気づく学園祭の華やぎを捉えています。色彩の統一感が秋の澄んだ光景を鮮明に想起させます。
霧襖ひらけば湖のありにけり
季語: 霧襖 (autumn)
【現代語訳】濃い霧の襖がすっと開いたかと思うと、目の前に静かな湖が広がっていたのだった。【鑑賞】霧に包まれて歩く中で、不意に霧が切れて目前に美しい水面が姿を現したときの驚きと感嘆を詠んでいます。霧の「白」と湖の「水の色」の対比、そして隠されていた広大な風景との出逢いが鮮明に伝わってきます。
金鈴子鳴くや厨の夜の更けて
季語: 金鈴子 (autumn)
【現代語訳】夜がすっかり更けた台所で、金鈴子が澄んだ声で鳴いている。 【鑑賞】人の気配が消えた深夜の「厨(台所)」という生活の場に、チッチッと響く金鈴子の鳴き声。ひんやりとした秋の空気と静寂が、虫の声によって美しく演出されています。
草の絮飛ぶやわが生のあたたかく
季語: 草の穂絮 (autumn)
【現代語訳】草の綿毛がふわりと飛んでいく。それを見つめる私自身の命の温もりがしみじみと感じられることだ。 【鑑賞】風に吹かれて散りゆく草の絮という無常の景を通して、いま生きている自分自身の生命の実感とあたたかさを対比的に噛み締めた情感豊かな一句です。
銀湾へ流るる川の月夜かな
季語: 銀湾 (autumn)
【現代語訳】月光に輝く銀色の湾へと静かに注ぎ込んでいく川の、なんと美しい月夜であることよ。 【鑑賞】川の流れを辿った視線が、広大に広がる銀色の海へと解き放たれるダイナミックな空間構成が魅力です。陸を流れる川と月光をたたえる湾の一体感が、秋の夜の雄大な静寂と美しさを際立たせています。
下り月や川瀬の音の立ちまさり
季語: 下り月 (autumn)
【現代語訳】夜空に下り月がかかり、静まり返った夜の中で川瀬の水音がいっそう際立って聞こえてくる。 【鑑賞】満月を過ぎてやや光の衰えた月光の下、視覚よりも聴覚が研ぎ澄まされる瞬間を捉えています。静寂の中に響く水音が、秋の夜の寂寥感と冷涼さを引き立てています。
国男忌や山河にとほき人のこゑ
季語: 国男忌 (autumn)
【現代語訳】国男忌を迎えた。澄みわたる山河の遥か彼方から、昔語りをする名もなき人々の声が聞こえてくるようだ。 【鑑賞】柳田國男の民俗学の精神に深く共鳴した句です。広大な山河に響く「遠き人の声」は、柳田が耳を澄まし続けた庶民や祖先たちの声であり、初秋の静寂の中に歴史の息遣いを感じさせます。
供養踊見てゐる人も死ぬる人
季語: 供養踊 (autumn)
【現代語訳】亡き精霊を供養して踊る人々をただ眺めている自分や周囲の人々も、やがては等しく死を迎える存在なのだ。 【鑑賞】生と死の境界が曖昧になる供養踊の場で、見物人自身もやがて死者となるという無常観を鋭く捉えた名句です。厳粛で深い哲学的実感が漂います。
小水葱咲くや濁れる水に日のおとろへ
季語: 子葱 (autumn)
【現代語訳】濁った田水の中に子葱が咲いている。その水面には秋の弱々しく衰えゆく夕日の光が射している。【鑑賞】田んぼの泥水とそこに咲く可憐な子葱の花、そして秋の日の暮れゆく光の弱まりを見事にとらえた一句です。衰えゆく光が青紫の花の侘しさを際立たせています。
高台忌雨の東山見えぬ日も
季語: 高台忌 (autumn)
【現代語訳】高台忌の今日、秋雨に煙って東山の山並みさえも見えない日であることだ。 【鑑賞】高台寺のある東山が秋の雨に隠れて見えない様子を詠んでいます。雨に閉ざされた京都の風景を通して、戦国の激動を生き抜いたねねの哀感や、歴史の彼方に想いを馳せる作者の深い寂寥感がしっとりと描かれています。
蒟蒻の花の咲く日は山曇る
季語: 蒟蒻の花 (autumn)
【現代語訳】めったに咲かない蒟蒻の花が咲くような日は、山全体が怪しげに曇るものだ。 【鑑賞】蒟蒻の花が咲くことの珍しさと不吉にも似た妖気を、山が曇る自然現象と結びつけて詠んだ一句です。民間伝承のような神秘的で土着的な雰囲気が漂っています。
小隼の影ひるがへり夕茜
季語: 小隼 (autumn)
【現代語訳】夕焼けに染まる茜色の空に、小隼の鋭い影が身をひるがえすように羽ばたいていった。 【鑑賞】茜色に染まる壮大な夕暮れの空と、そこを横切る小隼の黒いシルエットの鮮烈な対比が印象的です。秋の日の名残惜しさと生命の緊迫感が巧みに描かれています。
逆髪の祭すぎたる逢坂や
季語: 逆髪祭 (autumn)
【現代語訳】逆髪祭も無事に過ぎ去り、逢坂の関跡には秋の静けさが戻ってきたことだ。【鑑賞】祭のあとの寂寞とした気配が、秋深まる逢坂山の風景と見事に調和しています。「すぎたる」という時間の経過を示す措辞によって、古代から続く伝説の余韻と、祭のあとの静けさが際立っています。
鮭小屋に灯りて海のおぼろなる
季語: 鮭小屋 (autumn)
【現代語訳】鮭小屋にぽつりと明かりが灯り、その向こうに広がる海は薄暗くおぼろに霞んでいる。\n【鑑賞】川口近くの鮭小屋から海を望む情景です。夕暮れとともに小屋に灯るぬくもりある明かりと、境界が曖昧になっていく広大な海の寂寞とした冷たさの対比が詩情を誘います。