既生魄
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既生魄

きせいはく

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意味・由来

既生魄(きせいはく)とは、十五夜(満月)を過ぎてわずかに欠け始め、影が生じ始めた月(主に十六夜の月)を指す秋の季語です。「魄(はく)」とは月の影や暗い部分、または月そのものを意味する言葉で、古代中国の暦法や月齢の呼び名に由来しています。満月の完璧な円からほんの少しだけ陰りが生じ、月が出始める時間も遅くなるため、満月とは一味違うしみじみとした静かな情緒や、秋の夜長におけるあわれさを醸し出す言葉として俳諧で親しまれてきました。

この季語で詠むコツ

「既生魄」は漢語調の重厚で洗練された響きを持っています。和語である「十六夜(いざよい)」に比べてどこか神秘的で硬質な印象を与えるため、静寂な夜の空気感や、冷ややかに澄み渡る秋の気配を強調したい場面に最適です。満月よりも月出が遅いことから、月を待つ静かな時間(夜長や酒を酌む時間)の心の動きや、月光がもたらす陰影の美しさに着目して詠むと、深みのある作品になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 時間・心情に関する言葉(夜長、更くる、待つ、静もり)
  • 光・影・空に関する言葉(影、澄む、冴ゆる、雲、夜気)
  • 静かな風物(酒、水面、山の端、露)

既生魄」の俳句例 (3件)

既生魄影澄みわたる夜半かな
渡辺水巴【現代語訳】既生魄の月が夜空に上り、その冴え渡る光が生み出す影が、真夜中の静けさの中にくっきりと澄み渡っていることだ。 【鑑賞】秋の夜の冷たく澄んだ空気を一粒の余すところなく捉えた句です。「影澄みわたる」という精妙な表現が、月光の美しさと深閑とした夜の静寂を際立たせています。
既生魄月の出を待つ夜長かな
角川源義【現代語訳】満月を過ぎてわずかに影が生じた月が上ってくるのを、秋の長い夜の中で静かに待っていることだ。 【鑑賞】「既生魄」という厳かな言葉を選ぶことで、ただ月を待つだけの時間が、秋の夜長に深く思索へ沈み込むような味わい深いひとときへと高められています。
既生魄雲のひかりの定まらず
日野草城【現代語訳】既生魄の月が照らす夜空で、月をかすめる雲の明暗がゆらゆらと定まらずに揺らめいている。 【鑑賞】満月を過ぎた少し陰りのある月と、流れる雲が織りなす光のコントラストを描いています。完全ではない月だからこそ生まれる、幻想的で少しあやしげな美しさを繊細に捉えています。

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