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季語辞典
有馬朗人
俳
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有馬朗人
ありまあきと
作風・特徴
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代表句 (20件)
棕梠の聖日海へ傾くオリーブ園
季語: 棕梠の聖日 (spring)
『【現代語訳】棕櫚の聖日の今日、春の海に向かってなだらかに傾斜するオリーブの園は、まばゆい光に満ちあふれている。【鑑賞】キリストのエルサレム入城とオリーブ山での出来さを連想させる「オリーブ」を、棕櫚の聖日と巧みに取り合わせた知的な名句です。明るい春の海と、銀緑色に輝くオリーブの葉が織りなす風景は、まるで聖書の一場面のような光に満ち、祝祭日の喜びを美しく描き出しています。』
原爆忌天が大きな傷口か
季語: 原爆の日 (autumn)
『【現代語訳】原爆忌の日に見上げる空は、まるで天そのものが負った大きな傷口のようではないか。\n【鑑賞】原子核物理学者でもあった作者が、人間の犯した過ちの深さを天の傷として捉えたスケールの大きな一句です。夏の鋭い日差しと空の広がりの中に、癒えることのない悲劇の爪痕を直感させています。』
日輪の傾きやすき鮭の秋
季語: 鮭の秋 (autumn)
『【現代語訳】太陽が早くも西へと傾き、日暮れが早くなった秋の深まりの中に、鮭が遡上する季節がやってきた。【鑑賞】晩秋の急速な日の短さと、命を燃やして川を上る鮭の躍動感が見事に対比されています。冷気をはらんだ秋の光の美しさが際立つ一句です。』
秋学期講義の窓の青嶺かな
季語: 秋学期 (autumn)
『【現代語訳】秋学期の講義を受けている窓の向こうに、青々とした山並みが美しく見えていることだ。 【鑑賞】物理学者・東大総長を務めた有馬朗人の作です。教室の窓から見える山並みの澄んだ美しさと、知的な探求が始まる秋学期の晴れやかな空気が鮮やかに響き合っています。』
姉羽鶴ヒマラヤを越す風の中
季語: 姉羽鶴 (autumn)
『【現代語訳】姉羽鶴が、吹き荒れる風のなか、ヒマラヤの険しい山並みを越えて飛んでいく。 【鑑賞】姉羽鶴の生態である「ヒマラヤ越え」をダイナミックに切り取った一句です。厳しい自然の風に立ち向かい、高空を翔け抜ける姉羽鶴の小さくも逞しい生命力を、無駄のない言葉で力強く描き出しています。』
大津祭湖のひかりを曳山に
季語: 大津祭 (autumn)
『【現代語訳】大津祭の曳山が、秋の琵琶湖のきらめく光をその身に受けながら巡行している。 【鑑賞】秋晴れの湖の光を受けて輝く曳山の華やかさを捉えた句です。大津という水辺の町の開放感と、伝統ある祭の賑わいが見事に調和しています。』
死者の日の墓標濡らして小雨降る
季語: 死者の日 (autumn)
『【現代語訳】死者の日に、並び立つ墓標を濡らしながら静かに小雨が降っている。 【鑑賞】晩秋の冷たい小雨が墓標を濡らす情景が、死者を悼む日の寂しさと清浄な祈りの空気を際立たせています。』
若冲忌鶏の首ふりたるも
季語: 若冲忌 (autumn)
『【現代語訳】若冲忌である今日も、庭の鶏がきょろりと首を振る仕草を見せていることよ。 【鑑賞】若冲が自宅の庭で何羽も飼い、何年も観察し続けたという鶏の日常的な一瞬の動きを捉えています。「首ふりたるも」という何気ないスケッチの中に、若冲が愛し見つめ続けた動植物の愛嬌と生の息吹が穏やかに表現されています。』
秋思祭一本の木を遠巻きに
季語: 秋思祭 (autumn)
『【現代語訳】秋思祭の澄んだ空気のなか、立つ一本の木を遠くから静かに囲むように見つめている。 【鑑賞】孤高の樹木を遠巻きに眺める視線を通して、赤黄男という偉大な前衛俳人の孤高の佇まいを偲んでいます。物理的な距離感が、かえって深い敬意と秋の透明な哀愁を際立たせています。』
鍾馗蘭咲きて木洩れ日こぼれけり
季語: 鍾馗蘭 (autumn)
『【現代語訳】鍾馗蘭が咲いている場所に、木々の隙間からやわらかな木洩れ日がこぼれ落ちている。 【鑑賞】日陰を好む鍾馗蘭に、ふっと木洩れ日が射し込んだ一瞬の輝きを描いています。静かな深山のなかに差し込む光と花の存在が、絵画のように美しく切り取られています。』
諸聖徒日海を渡りて風来たる
季語: 諸聖人の祝日 (autumn)
『【現代語訳】諸聖人の祝日に、遠い海を渡って冷涼な風が吹き寄せてくる。 【鑑賞】海外から伝わった聖なる祝日という背景を意識させつつ、海から吹いてくる晩秋の引き締まった風を捉えています。広大な海と空の広がりを感じさせ、透明感と荘厳な気配を漂わせる一句です。』
聖体行列光の粒をふみゆけり
季語: 聖体行列 (autumn)
『【現代語訳】聖体行列が、秋の澄んだ陽光が地にこぼれた光の粒を踏みしめるようにして、厳かに進んでゆく。【鑑賞】秋の透明感ある光に満ちた道を、敬虔な信徒たちが進む美しく清らかな情景です。足元の陽射しを「光の粒」と捉えた繊細な表現が、祈りの場の神聖さを際立たせています。』
聖母生誕祭海の青さのきはまりて
季語: 聖母生誕祭 (autumn)
『【現代語訳】聖母マリアの誕生を祝う佳き日、眼前に広がる秋の海の青さが極限まで深まり、鮮やかに澄み渡っている。\n【鑑賞】初秋の晴れ渡った空の下、海の深い青と聖母マリアの象徴色である「マリアンブルー(青)」が重なり合い、崇高な自然の美しさと祈りの心が響き合っている名句です。』
被昇天祭白き巨船の出でてゆく
季語: 聖母被昇天祭 (autumn)
『【現代語訳】聖母被昇天祭の澄み渡る日、港から純白の巨大な船が静かに航海へと旅立っていく。\n【鑑賞】港町の聖母祭の風景を描いた一句。聖母マリアの純潔を象徴するような「白き巨船」が海原へと進んでいく様子は、天へと昇った聖母の神話的なスケール感と重なり、壮大で祝福に満ちた余韻を残します。』
聖ミカエル祭の鐘やオックスフォード
季語: 聖ミカエル祭 (autumn)
『【現代語訳】聖ミカエル祭を迎えたオックスフォードの街に、教会の鐘の音が厳かに響き渡っている。\n【鑑賞】英国の歴史ある学術都市オックスフォードでは、聖ミカエル祭(ミカエルマス)は秋学期の始まりを告げる重要な節目でもあります。ヨーロッパの澄み切った秋空の下、重厚な石造りの街並みに響く鐘の音が、知性と信仰の歴史を感じさせる格調高い一句です。』
袖黒鶴シベリアの風連れ来しや
季語: 袖黒鶴 (autumn)
『【現代語訳】袖黒鶴は、遥かなシベリアの冷たい風を身にまとって連れてやってきたのだろうか。【鑑賞】日本に飛来した袖黒鶴の羽ばたきや立ち姿から、北の大地シベリアの冷涼で雄大な気候を感じ取った一句です。秋の深まりとともに渡ってきた鳥の雄大な旅路に思いを馳せています。』
城山を雲の這ひゆく南洲忌
季語: 隆盛忌 (autumn)
『【現代語訳】南洲(西郷隆盛)の命日、終焉の地である城山を、低い雲が這うように流れてゆく。 【鑑賞】「南洲忌」の重々しい空気を、山肌を這う雲の動きでダイナミックかつ叙情的に捉えています。城山を包む雲の姿が、時代の激動に散った西郷の無念や雄渾な気魄を連想させます。』
聖ミカエルの日や青空の果てしなく
季語: 聖ミカエルの祝日 (autumn)
『【現代語訳】聖ミカエルの祝日を迎え、見上げる秋の青空はどこまでも果てしなく澄み渡っていることだ。【鑑賞】大天使ミカエルの祝日にふさわしい、一点の曇りもない秋天の広がりを真っ直ぐに捉えた一句です。物理学者でもあった作者らしい、空間の広がりと天上的な崇高さをシンプルかつ伸びやかに詠み上げています。』
竪琴を抱けば秋風鳴るごとし
季語: 立琴 (autumn)
『【現代語訳】竪琴を胸に抱きかかえると、吹き抜ける秋風がその弦を鳴らして歌っているかのように感じられる。 【鑑賞】物理的に弦を爪弾くのではなく、澄みきった秋風そのものが竪琴に触れて音を奏でているような幻想的な感覚を詠んでいます。楽器の持つ古典的な気品と秋の風の清涼感が見事に重なり合い、詩情あふれる世界を立ち上げています。』
玉子天狗茸木漏れ日浴びて白極む
季語: 玉子天狗茸 (autumn)
『【現代語訳】玉子天狗茸が、木々の間から差し込む光を浴びて、この上なく透き通るような白さを極めている。【鑑賞】薄暗い森の中で、頭上から零れ落ちる一条の陽光を受けた玉子天狗茸の姿を捉えた句です。その純白さは神聖さすら漂わせますが、それこそが猛毒を秘めた警戒の色でもあります。光と白の清浄さによって、逆にキノコが持つ冷徹な美しさがくっきりと浮かび上がっています。』
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