野分雲

野分雲

のわきぐも

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意味・由来

「野分雲(のわきぐも)」とは、秋に日本列島を襲う台風や暴風である「野分(のわき)」の前後に現れる特徴的な雲のことです。古来、草木を激しく吹き分ける強い風を「野分」と呼びましたが、その大風に伴って空を覆う暗雲や、強風に千切られて猛スピードで飛び去っていく雲、あるいは嵐が去った後の茜空に浮かぶ雲などを指します。荒々しい自然の脅威を予感させ、季節の急激な移ろいを感じさせる陰影に富んだ晩秋の季語です。

この季語で詠むコツ

「野分雲」は非常に動きと表情のある季語です。詠む際には、雲の「形」「動き」「色」に注目すると臨場感が生まれます。「千切れる」「垂れる」「飛ぶ」「走る」といった動詞と相性が良いですが、動詞で説明しすぎず、雲の背景にある空の明るさや、地上(海、山、家並みなど)の風景を具体的に描写することで、雲の異様さや風のすさまじさを際立たせることができます。嵐の接近による緊張感を描くのか、あるいは通過後の静けさや安堵感を描くのか、状況を絞って表現すると効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・動勢を表す語:ちぎれ飛ぶ、低し、走る、吹き払ふ ・色や光を表す語:夕茜(ゆうあかね)、鈍色(にびいろ)、夕日影、暮色 ・地上の情景:入江、連山、遠浅、家路、波頭

野分雲」の俳句例 (3件)

野分雲ちぎれちぎれて暮れにけり
久保田万太郎【現代語訳】野分に伴う猛烈な風に雲が千切れ千切れに吹き飛ばされながら、そのまま日が暮れてしまったことだ。 【鑑賞】風の激しさと空の刻一刻と変わる表情を、「ちぎれちぎれて」という平易な畳語で的確に捉えています。荒涼とした空が一気に薄暗い夜へと沈んでいく無常感や寂寥感が、万太郎らしい抒情とともに漂う名句です。
野分雲低う垂れたる入江かな
正岡子規【現代語訳】野分の黒雲が重々しく低く垂れ込めている、この入江の風景であることよ。 【鑑賞】嵐がまさに迫りつつある海辺の入江を写生した句です。「低う垂れたる」という描写が、今にも暴風雨が襲いかかろうとする前の不気味な静寂と緊張感を余すところなく伝えています。一幅の絵画のように視覚的な迫力があります。
野分雲とびつくしてや星の空
水原秋櫻子【現代語訳】吹き荒れていた野分の雲がことごとく飛び去って、見事な満天の星空が広がっていることだ。 【鑑賞】台風一過の夜空の美しさを鮮やかに詠んだ句です。激しい嵐の中で吹き千切られていた雲がすっかり去った後、思いがけず現れた澄み切った星空の美しさに息をのむ感動があります。「とびつくしてや」という切れに、自然のダイナミックな変化への感嘆が込められています。

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