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水原秋櫻子

みずはらしゅうおうし

作風・特徴

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代表句 (20件)

飾馬の鈴ふり立てて馳せにけり
季語: 錦馬 (autumn)
【現代語訳】美しく飾られた馬が、身につけた鈴の音を激しく鳴り響かせながら勢いよく駆け抜けていった。【鑑賞】秋祭りの奉納馬が疾走する動的な一瞬を切り取った句です。「鈴ふり立てて」という描写によって、華やかな馬の装飾とリズミカルで清涼な金属音が生き生きと五感に伝わってきます。
梨もぎの籠かたむけて選りゐたる
季語: 日本梨 (autumn)
【現代語訳】梨をもぎ取る人たちが、収穫した籠を傾けて実を選別していることだ。【鑑賞】梨園での生き生きとした収穫風景を写生した句です。「籠かたむけて」という動的な描写によって、豊かに実った梨が次々と選り分けられていく秋の実りの活気が浮き彫りになっています。
聖徒祭灯のかがやきに祈り満つ
季語: 聖徒祭 (autumn)
【現代語訳】聖徒祭の教会の中は、幾重にも重なる灯火の輝きと、人々の純粋な祈りで満ちあふれている。【鑑賞】秋櫻子らしい清らかで絵画的な美しさが際立つ句です。教会内に灯るあたたかな明かりと、人々の敬虔な祈りが調和し、聖徒祭の持つ崇高で温かい救いの情景が伝わってきます。
聖母昇天祭青嶺の雲のちぎれ飛ぶ
季語: 聖母昇天祭 (autumn)
【現代語訳】聖母昇天祭の今日、青々と茂る連峰の上を白い雲がちぎれて天へと飛ぶように流れていく。\n【鑑賞】天へと昇った聖母マリアの祝日にふさわしく、青嶺と千切れて吹き飛ぶ白雲という動的で清冽な自然描写を通して、天上への憧憬と神聖な気品を格調高く詠み上げています。
聖心祭蝋涙白く垂れにけり
季語: 聖母聖心祭 (autumn)
【現代語訳】聖母聖心祭の祈りの中、灯された蝋燭から白い蝋のしずくが静かに垂れ落ちている。 【鑑賞】祭壇に灯された蝋燭の火と、白く固まる蝋の涙のような滴りを捉えた情緒あふれる句です。「蝋涙」という言葉が、人々の祈りや聖母の深い慈愛、哀憐の情を象徴し、初秋の静かな空気感を伝えています。
西洋朝顔瑠璃の深きを惜しみけり
季語: 西洋朝顔 (autumn)
【現代語訳】西洋朝顔の深く澄んだ瑠璃色の花を、日が暮れて失われていくのを惜しむように見つめている。\n【鑑賞】秋の澄んだ空気の中で咲き誇る西洋朝顔の、吸い込まれそうな深い青色に対する感動と愛惜の情が率直に詠まれています。伝統美を愛した秋櫻子が、近代的な花の鮮烈な色彩美を見事に捉えた一句です。
背黒鰯干す浜の日の昃りけり
季語: 背黒鰯 (autumn)
【現代語訳】背黒鰯が一面に干されている秋の浜辺に、静かに日が陰ってきたことだ。 【鑑賞】浜辺一面に広げられた背黒鰯と、秋の日の傾きの早さを対比させて捉えた一句です。鰯が受ける光が徐々に鈍くなり、夕暮れの寂しさと秋風の冷たさが伝わってきます。
餞月や杉の梢の露光り
季語: 餞月 (autumn)
【現代語訳】去りゆく月を見送る空の下、杉の木立の梢に結んだ夜露がきらきらと光っている。 【鑑賞】天上の月と地上の梢に宿る露のきらめきが響き合い、秋の冷気と透明感が美しく表現されています。光を巧みに操る秋櫻子らしい、清麗でロマンチックな情景です。
根魚釣る岩礁のうしろ波青し
季語: 根魚釣 (autumn)
【現代語訳】根魚を釣っている足元の険しい岩礁の背後で、秋の波が青々と澄んで打ち寄せている。【鑑賞】根魚釣という手元の微細な動静に対して、背後に広がるどこまでも青く澄んだ秋の海を鮮やかな色彩で捉えています。秋櫻子らしい清潔で絵画的な美しさが光る句です。
仙入や霧立ちこむる草の原
季語: 仙入 (autumn)
【現代語訳】霧が深々と立ち込める秋の草原に、姿を見せない仙入が潜んでいる気配がする。\n【鑑賞】高原の霧と、草深き場所にひそやかに隠れる仙入の生態をみずみずしい叙情で捉えた一句です。静寂と湿り気のある秋の高原の空気感が鮮明に伝わってきます。
千振の小径ゆづりて行きにけり
季語: 千振 (autumn)
【現代語訳】千振の花が咲く細い山道で、互いに道を譲り合って通り過ぎていった。\n【鑑賞】秋の山歩きにおいて、行き交う人との静かな会釈やすれ違いを描いた名句です。足元に咲く千振の可憐な姿が、行き交う人々の心にある穏やかさや優しさを引き立てており、爽やかで品のある情景が目に浮かびます。
千振干す障子にあたる夕日かな
季語: 千振干す (autumn)
【現代語訳】軒先に千振が干されており、その奥の障子に晩秋のやわらかな夕日が静かに差し込んでいることだ。 【鑑賞】薬草を干す素朴な軒端の光景と、障子に映える夕日の対比が美しい一句です。医学博士でもあった秋櫻子らしい、薬草に対する親しみと澄んだ叙情が感じられます。
素心蘭ともしび遠く匂ひけり
季語: 素心蘭 (autumn)
【現代語訳】素心蘭の清らかな香りが、灯火の光が届く遠くまで漂っていることだ。 【鑑賞】静かな秋の夜、灯火と蘭の澄んだ芳香が空間を満たす情景を描いています。視覚と嗅覚が美しく溶け合い、素心蘭の持つ高雅で澄み切った佇まいが際立つ名句です。
榛の実の落つる日和のつづきけり
季語: 榛の実 (autumn)
【現代語訳】榛の実がぽろぽろと落ちるような、穏やかで晴れやかな秋の日がずっと続いていることだ。【鑑賞】澄み渡る秋晴れの下、木の実が静かに落ちる山里の長閑さと、深まりゆく秋の気配が穏やかに捉えられています。
袖黒鶴水に影置く夕日かな
季語: 袖黒鶴 (autumn)
【現代語訳】夕日に照らされる水辺に、袖黒鶴が凛とした美しい影を落としていることだ。【鑑賞】夕暮れ時の水辺の静寂と、夕日に染まる光の中で白い翼と黒い羽先を持つ袖黒鶴が際立つ情景を美しく捉えています。秋櫻子らしい色彩感覚豊かな絵画的描写が光る名句です。
野分雲とびつくしてや星の空
季語: 野分雲 (autumn)
【現代語訳】吹き荒れていた野分の雲がことごとく飛び去って、見事な満天の星空が広がっていることだ。 【鑑賞】台風一過の夜空の美しさを鮮やかに詠んだ句です。激しい嵐の中で吹き千切られていた雲がすっかり去った後、思いがけず現れた澄み切った星空の美しさに息をのむ感動があります。「とびつくしてや」という切れに、自然のダイナミックな変化への感嘆が込められています。
茨の実や日ざし細そりと川原石
季語: 野茨の実 (autumn)
【現代語訳】赤く熟れた野茨の実が揺れ、秋の光が川原の石に細く頼りなげに射し込んでいる。 【鑑賞】川原の殺風景なゴロゴロとした石の上に、晩秋の淡く弱々しい日ざしが落ちています。そのかたわらで艶やかに赤らむ茨の実が繊細な美しさを添えており、秋桜子らしい絵画的な色彩感覚と澄んだ詩情が際立つ名句です。
天高し赤城榛名をおさへたり
季語: 空高し (autumn)
【現代語訳】秋の空が高く晴れわたり、赤城山や榛名山といった上州の名峰をその広大な懐に包み込んでいる。【鑑賞】上州の雄大な山々を眼下に見晴るかすようなスケール感のある句です。名峰をも包み込む秋天の圧倒的な高さと威厳が、「おさへたり」という引き締まった措辞によって生き生きと描かれています。
反脚鴫あるときは波をかぶりけり
季語: 反脚鴫 (autumn)
【現代語訳】反脚鴫が波打ち際で餌を探していると、時には寄せてくる波をそのままかぶってしまうことがあった。 【鑑賞】波打ち際を忙しなく走り回る反脚鴫のひたむきな姿を捉えた一句です。波をかぶりながらも動じずに餌を求める小鳥の健気さと、秋の海の冷涼な美しさが鮮やかに描かれています。
反嘴鴫潮さす潟に遠く居り
季語: 反嘴鴫 (autumn)
【現代語訳】反嘴鴫が、次第に潮が満ちてくる広大な干潟の遠くのほうに佇んでいる。 【鑑賞】満ち潮という自然のダイナミックな変化と、遠浅の干潟に小さく佇む反嘴鴫の姿を対比させ、秋の水辺の広がりと静けさを端正に切り取った名句です。