口女
autumn 生活

口女

くちめ

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意味・由来\n「口女(くちめ)」は、主に秋に旬を迎える海水魚で、和歌山県(紀州)をはじめとする地方で「フエフキダイ(笛吹鯛)」や「メジナ」などを指す方言・地方名です。「口女」という、どこか人の女性を思わせる艶っぽく神秘的な漢字が当てられているのが特徴です。実際の魚は磯釣りの対象として人気があり、秋になると脂が乗って非常に美味しくなります。俳句においては、その一風変わった名前の響きや漢字の面白さ、そして紀州などの海辺の旅情を誘う季語として古くから親しまれてきました。\n\n### この季語で詠むコツ\n「口女」という言葉自体が持つ、どことなく寂しげで土着的な響きを活かすのがコツです。単に「魚を釣った」「食べた」という日常の事実を詠むだけでなく、その名前の妖艶さや、紀伊半島の荒々しくも美しい自然、夕暮れの漁村の風景などと重ね合わせることで、句に深い旅情や叙情性を与えることができます。また、白身の締まった身を焼くときの香りや、火の粉といった五感を刺激する描写を取り入れるのも効果的です。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 地名・旅を想起させる言葉(紀の路、熊野、瀬戸、磯、夕暮れ、旅の宿など)\n- 五感に響く言葉(塩、網、火、焼く、香、波の音、潮騒など)\n- 秋の自然現象(夕時雨、秋風、夜の潮、秋の暮など)

口女」の俳句例 (3件)

口女てふ魚を食ひけり秋の旅
高浜虚子【現代語訳】旅先で「口女」という名の魚を食べた、しみじみとした秋の旅であることよ。【鑑賞】虚子が紀州などを旅した際に出会った「口女(くちめ)」という珍しい魚の名前に着目し、旅先での素朴な食事の驚きと喜びをありのままに詠んだ一句。「口女」という名の持つ不思議な響きが、秋の旅情をいっそう深いものにしています。
口女焼く火のあかあかと夜の潮
山口誓子【現代語訳】口女を焼くための火が暗闇の中に赤々と燃えており、その向こうには夜の潮が満ちてきている。【鑑賞】夜の海辺で「口女」を焼く、激しく燃え盛る「火」の赤さと、その背後に広がる暗く冷たい「夜の潮」とのコントラストが鮮やかに描かれています。誓子らしいモダンで知的な色彩感覚が光る名作です。
口女売る紀の路の村の夕しぐれ
野村泊月【現代語訳】紀州の街道沿いの村で、口女という魚を売っている。そこへ夕方のしぐれが寂しく降ってきた。【鑑賞】紀州の名物である「口女」を売るひなびた漁村の風景に、秋から冬へと移り変わる冷たい「夕しぐれ」を重ね合わせています。旅愁と、どこか物悲しい生活感が漂う情緒豊かな一句です。

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