秋の金魚

秋の金魚

あきのきんぎょ

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意味・由来

金魚」は本来、夏の風物詩として涼を呼ぶ夏の季語ですが、「秋の金魚」は秋になってもなお水槽や鉢、池に残されて飼われている金魚を指す秋の季語です。 水温が下がる秋になると、金魚は夏のような活発さを失い、底にじっと沈んだり、緩やかに泳いだりするようになります。夏の賑やかさや涼しげな華やぎが去ったあとの、澄んだ冷たい水の中に漂う金魚の姿には、そこはかとない寂寥感や哀愁、あるいは静謐な美しさが漂います。

この季語で詠むコツ

夏の金魚との対比を意識し、「水と空気の冷たさ」「動きの緩慢さ」「色彩の対比」に焦点を当てるのがコツです。 秋の澄み切った水の中で、金魚の赤や白がより鮮やかに際立つ様子や、水底に落ちる影の濃さ、日差しが弱まる夕暮れの情景などを捉えると、秋ならではの風情が生まれます。また、人間の生活の落ち着きや、過ぎ去った夏への感慨を金魚のたたずまいに重ねて詠むのも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 水・光の描写:澄む、冷やか、水底、秋日、夕影、ガラス鉢
  • 動き・状態:沈む、揺らぐ、緩やか、佇む、尾を引く
  • 心情・背景:静けさ、寂寥、名残、古庭、窓辺

秋の金魚」の俳句例 (3件)

秋の金魚のの字のの字と泳ぎけり
川端茅舎【現代語訳】秋の金魚が、水の中でひらがなの「の」の字を描くように、ゆったりと輪を描いて泳いでいることだ。 【鑑賞】「のの字のの字」という軽妙なオノマトペ的表現によって、水温が下がり動きが緩やかになった金魚の泳ぎ姿を的確に捉えています。ユーモラスでありながら、どこか秋の孤独や静けさがじんわりと伝わってくる名句です。
秋の金魚飼ひ殺さむとすれば死なず
日野草城【現代語訳】秋の金魚をいっそ飼い殺してしまおうかと思っていると、かえってしぶとく死なずに生き続けている。 【鑑賞】夏が過ぎて世話がおろそかになりがちな秋の金魚と、それを見つめる自身の鬱屈した心理を大胆に詠み込んだ句です。「飼ひ殺さむ」という強い措辞に、病床にあった草城自身の生への執着や自嘲的な視線が重なり、深い実存的な哀歓を感じさせます。
秋の金魚われを見むとてうきあがる
久保田万太郎【現代語訳】秋の金魚が、近づいた私を見つめようとするかのように、水底からすうっと浮き上がってきた。 【鑑賞】人が覗き込むと餌を求めて浮いてくる金魚の習性を、「私を見ようとして」と情緒豊かに擬人化して受け止めています。秋の静まり返った庭や縁側で、孤独な人間と金魚との間に通い合う淡い心の交流が、下町風情のある温かな眼差しで描かれています。

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