メディアTop
季語辞典
長谷川零余子
俳
? - ?
長谷川零余子
はせがわれいよし
作風・特徴
作風の解説はまだ登録されていません。
代表句 (17件)
生渋の匂ひて暗き納戸かな
季語: 生渋 (autumn)
『【現代語訳】搾り立ての柿渋の独特な匂いが漂い、納戸の中が薄暗く感じられることだ。【鑑賞】搾ったばかりの生渋(きしぶ)の強い青臭い匂いが、薄暗い納戸の静けさと相まって、秋の深まりや農家の真面目な生活感をリアルに醸し出しています。』
義秀忌野菊一枝を挿しにけり
季語: 義秀忌 (autumn)
『【現代語訳】義秀忌の今日、静かに野菊の一枝を花瓶に挿したことだ。 【鑑賞】室町時代の連歌師・義秀を悼みつつ、華やかすぎない野菊をさりげなく活けた一光景です。作者の文芸に対する慎ましやかな敬意と、洗練された秋の風情が感じられます。』
火祭や鞍馬の杉の闇深し
季語: 鞍馬の火祭 (autumn)
『【現代語訳】勇壮な火祭が繰り広げられているが、その炎を包み込む鞍馬山の杉木立の闇はどこまでも深い。【鑑賞】赤々と燃え盛る松明の火と、周囲にそびえる杉木立の重厚な闇のコントラストを見事に捉えています。激しい祭りの熱気と、それを呑み込む古代からの山の深淵さが響き合い、鞍馬の神聖な雰囲気を際立たせています。』
群鳥の羞を養ふ梢かな
季語: 羣鳥羞を養ふ (autumn)
『【現代語訳】群がる鳥たちが冬に備えてせっせと餌を啄んでいる、秋の木々の梢であることよ。 【鑑賞】色づき始めた木々の梢に目を向け、小鳥たちが冬支度にいそしむ姿を素直に捉えた一句です。秋の豊かな実りと、鳥たちの本能的な活気を感じさせます。』
酒面雁首長々と立ちにけり
季語: 酒面雁 (autumn)
『【現代語訳】酒面雁が水辺に降り立ち、その長い首をすらりと伸ばして警戒するように立っていることだ。 【鑑賞】酒面雁の特徴である長めの首と、特徴的な顔立ちを端的に捉えた写生句です。渡ってきたばかりの緊張感と、野生の鳥ならではの引き締まった佇まいが、無駄のない言葉運びによって鮮やかに立ち現れています。』
茜掘る女の爪のくろみけり
季語: 茜掘る (autumn)
『【現代語訳】茜の根を掘り起こしている女性の爪先が、土と茜の汁で黒く染まっていることだ。 【鑑賞】美しい茜色を染め出すための泥臭い労働に焦点を当てた写生句です。女性の指先・爪の黒ずみに着目することで、秋の冷たい土を懸命に掘る労働の厳しさとひたむきさが鮮やかに描き出されています。』
秋土用干潟に蟹の穴多し
季語: 秋土用 (autumn)
『【現代語訳】秋土用の冷え込む海辺の干潟に、無数の蟹の穴がぽつぽつと開いている。 【鑑賞】晩秋の干潟のどこか寂しげな光景を写生した一句です。引き潮の冷たい砂地と無数の穴の描写が、秋土用特有の乾いた風やもの寂しさを鮮明に伝えています。』
旅笠のほつれも秋の一遍忌
季語: 一遍忌 (autumn)
『【現代語訳】使い古した旅笠の縁がほつれているのも、秋の一遍忌の日にふさわしく感じられることだ。\n【鑑賞】生涯を旅路に捧げた一遍上人を偲びつつ、身の回りの旅道具の傷みに目を留めています。旅笠のほつれという具象に、清貧に生きた上人への敬慕と秋の哀愁が滲み出ています。』
貝割菜きれいに洗ひそろへけり
季語: 貝割れ菜 (autumn)
『【現代語訳】貝割れ菜を水で綺麗に洗い流し、向きをそろえて美しく整えたことだ。 【鑑賞】調理の手元を素直かつ丁寧に写生した一句です。細く繊細な貝割れ菜を丁寧に水洗いし、茎をそろえる日常の細やかな動作から、台所の清潔感やみずみずしい秋の涼気が伝わってきます。』
鹿谷祭厨に赤き火を焚けり
季語: 鹿谷祭 (autumn)
『【現代語訳】鹿谷祭の当日、寺の台所では赤々と勢いよく火が焚かれている。【鑑賞】祭りで振る舞う名物の鹿ヶ谷かぼちゃを大鍋で煮炊きしている様子を詠んだ一句です。「赤き火」という色彩の強調が、山裾の涼しい秋気の中に温かな活気と信仰の温もりを感じさせます。』
篠茸や薄日のもれる藪の中
季語: 篠茸 (autumn)
『【現代語訳】篠茸が生えている、ほのかな秋の日差しがかすかに漏れ差す竹藪の中であることよ。【鑑賞】鬱蒼とした篠藪の中にわずかに射し込む秋の「薄日」に照らされた篠茸を描いています。光と影の繊細なコントラストが、深まりゆく秋の寂寥感と温もりを同時に醸し出しています。』
水上浮かたまりやすき秋の風
季語: 水上浮 (autumn)
『【現代語訳】秋風が水面を吹き抜けるたびに、水上浮が一箇所に寄り集まりやすくなっている。 【鑑賞】秋の冷たい風を受けて、水面を漂う水上浮たちが身を寄せるように群れる様子を捉えています。風の冷たさと季節の移ろいに対する虫たちの敏感な生態が、しみじみとした情感を呼び起こします。』
胙を献ず文廟秋の雨の中
季語: 胙を献ず (autumn)
『【現代語訳】孔子を祀る文廟に秋の雨が静かに降る中、厳かに胙を献ずる儀式が執り行われている。 【鑑賞】しとしとと降る秋雨の静寂が、文廟という神聖な空間の厳粛さを引き立てています。古い伝統儀式である「胙を献ず」の格調高さと、秋雨の湿り気を帯びた空気感が見事に調和した一句です。』
辻祭提灯ともる辻ごとに
季語: 辻祭 (autumn)
『【現代語訳】辻祭の夜、道が交差する辻ごとに提灯が赤々と灯っていることだ。 【鑑賞】町中のあちこちにある辻地蔵の祠に、それぞれ提灯が灯されている光景をシンプルかつ的確に捉えた句です。「辻」の語を重ねることで、町角から町角へと連なる提灯の温かい光のリズムと、地域全体がお地蔵様への感謝に包まれている素朴な賑わいが生き生きと伝わってきます。』
針金虫からまりあへる水輪かな
季語: 針金虫 (autumn)
『【現代語訳】針金虫が互いに複雑に絡まり合いながら動くたびに、静かな水面に波紋が幾重にも広がっている。【鑑賞】水底で結び目を作るように蠢く黒く細い針金虫と、その動きによって水面に生まれる繊細な「水輪」の幾何学的な美しさを対比させています。不気味な生態を静謐で透明感のある秋の情景へと見事に昇華させた作品です。』
菱舟のゆらりと岸を離れけり
季語: 菱舟 (autumn)
『【現代語訳】菱の実を採る小舟が、ゆらりと揺れながら静かに岸を離れていった。【鑑賞】「ゆらりと」というオノマトペによって、底が平たく小さな菱舟特有の頼りなげな揺れが実感豊かに伝わってきます。静かな水面へ漕ぎ出していく作業の始まりを素朴かつ鮮やかに切り取っています。』
秀吉忌五七桐の瓦かな
季語: 秀吉忌 (autumn)
『【現代語訳】秀吉忌の今日、見上げれば古瓦に太閤ゆかりの五七の桐の家紋が残されていることよ。\n【鑑賞】豊臣家の象徴である「五七の桐」が刻まれた瓦に焦点を絞ることで、かつて天下を誇った栄華の面影と、それが今や一枚の瓦として秋の光に晒されている無常感とを鮮やかに描いています。簡潔ながら歴史の重みと秀吉忌の哀愁が凝縮された一句です。』
あなたも一句、詠んでみませんか
この俳人をシェアする
フィードバックはこちら