菱舟

菱舟

ひしぶね

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意味・由来 菱舟(ひしぶね)とは、池や沼、堀などに一面に自生する菱の実を収穫するために用いられる小さな舟のことです。水草がびっしりと繁茂する浅い水面を進むため、小回りが利く底の平らな小舟や、盥舟(たらいぶね)のような簡素で小さな舟が使われます。菱の実は古くから食用や薬用として親しまれており、秋に水面を覆う菱の葉をかき分けながら実を手摘みしていく情景は、水辺の秋を象徴する静かで長閑な風物詩として古くから俳句に詠まれてきました。 ### この季語で詠むコツ 菱舟は密集した菱の葉を押し分けるようにゆっくりと進むため、水面の静寂や独特の緩やかな時間の流れ、あるいは小舟特有の頼りなげな揺らぎを描くのが効果的です。舟を操る竿のさばき、収穫する人の手元の動き、秋の斜光を浴びる水面のきらめきや夕暮れの冷気など、視覚や肌感覚を丁寧に捉えることで、水郷情緒と晩秋の哀愁を際立たせることができます。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ 水辺の表情を描く「水輪」「水尾(みお)」「水草」「暮色」「秋風」、舟や作業の様子を表す「棹(さお)」「ゆらり」「舳(へさき)」「手籠」などの言葉とよく調和します。

菱舟」の俳句例 (3件)

菱舟や水尾引くほどのことならで
松本たかし【現代語訳】菱を採る舟が出ているが、航跡を引くほどの勢いもなく、水草の間を静かに漂うように進んでいる。【鑑賞】水草が生い茂る水面を進む菱舟の、極めて穏やかで微かな動きを的確に捉えた名句です。水尾すら立たない水面の静寂と、秋の日の緩やかな時間の流れが美しく表現されています。
菱舟の舳に立てば暮れかかる
水原秋桜子【現代語訳】菱舟の舳先にすっと立ち上がると、あたりはいつの間にか夕暮れの気配に包まれていた。【鑑賞】菱採りに没頭していた人物がふと立ち上がった瞬間、急速に迫る秋の日の暮れ方に気づく場面です。水辺の広がりと暮色の冷涼感が、舳先に立つシルエットを通して鮮明に描かれています。
菱舟のゆらりと岸を離れけり
長谷川零余子【現代語訳】菱の実を採る小舟が、ゆらりと揺れながら静かに岸を離れていった。【鑑賞】「ゆらりと」というオノマトペによって、底が平たく小さな菱舟特有の頼りなげな揺れが実感豊かに伝わってきます。静かな水面へ漕ぎ出していく作業の始まりを素朴かつ鮮やかに切り取っています。

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