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「行く秋」は、深まりゆく秋が次第に終わりを告げ、冬へと移り変わっていく情景を惜しむ晩秋の季語です。古くから詩歌において、美しく豊かな秋の日々が足早に去っていくことへの名残惜しさや、近づく寒さへの一抹の寂しさを込めて詠まれてきました。単に暦の上の終わりを示すだけでなく、去りゆく季節そのものへの愛着や哀愁が凝縮された情緒あふれる言葉です。
「行く秋」という言葉自体に「惜しむ」「寂しい」という感情がすでに豊かに含まれています。そのため、「寂し」「惜し」といった感情を直接表す言葉を重ねず、具体的な光景や日常のひとコマを丁寧に描写するのが成功の秘訣です。例えば、日ごとに傾きを増す日差しの色、冷たさを帯びてきた水の手触り、長くなった夕暮れの影など、五感で捉えた変化を取り合わせることで、読者の心に去りゆく秋の気配を鮮やかに呼び起こすことができます。
季節の推移をさりげなく引き立てる無季の日常語や、同じ秋の季語との取り合わせがよく調和します。 ・無季の言葉:窓辺、夕暮れ、影、時計、靴音、机、背中、白湯 ・秋の言葉:秋風、夕月、澄む空、野菊、露
行く秋や
残葉まばらに
空高し
行く秋に
野菊のそつと
佇めり
色褪せし
沈黙残る
行く秋や
行く秋や
雑木林へ
日照雨して
行く秋や
漁の手袋
冷ゆるなり
行く秋の
跡を追ふのか
影法師
行秋を
見送る沼や
笑み浮かぶ
行く秋や
新刊並ぶ
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