東京蟋蟀

東京蟋蟀

とうきょうこおろぎ

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意味・由来「東京蟋蟀(とうきょうこおろぎ)」は、秋の夜、大都会・東京のコンクリートやアスファルトの隙間、ビル街の植え込み、地下鉄の通気口付近などで鳴くコオロギを指す現代的な季語です。古来の俳句における蟋蟀は、静寂な草むらや農村の庭先、侘び住まいの床下などで物悲しく鳴く風流な存在でした。しかし近代以降、大都市の無機質な人工物と騒音に囲まれながらも逞しく、どこか哀愁を帯びて鳴く姿に新たな風情が見出され、都市生活者の孤独や時代感覚を映し出す季語として定着しました。### この季語で詠むコツ「東京」という巨大都市の騒音や人工的な景観と、蟋蟀という小さく儚い命の鳴き声との「対比」を鮮明に描くことが最大のコツです。車の轟音、深夜のネオン、舗装道路の亀裂、ビル風など、都市ならではの具体的な物象を取り合わせることで、単なる秋の虫の句にとどまらない、現代社会に生きる人間の実存やペーソスを立ち上がらせることができます。### 相性のいい言葉・取り合わせアスファルト、舗道、ビルの谷間、ネオン、終電、靴音、排気ガス、深夜、鉄扉、人混みなど、都会的で硬質・無機質な言葉と好相性です。それらの冷たい言葉の中に小さな虫の命を置くことで、詩情が際立ちます。

東京蟋蟀」の俳句例 (3件)

東京蟋蟀靴音の絶ゆることのなし
加藤楸邨【現代語訳】大都会・東京の蟋蟀は鳴いているが、行き交う人々の靴音が夜遅くまで途絶えることがない。【鑑賞】都会の乾いた舗道に響き続ける人々の靴音と、その足元で懸命に鳴く蟋蟀の声の対比が鮮やかです。深夜になっても眠らないメガロポリスの孤独と、そこで生きる人間の哀歓を、足元の小さな命に重ね合わせて詠み上げた名句です。
東京蟋蟀舗装の割れに鳴きにけり
石田波郷【現代語訳】東京の冷たい舗装のわずかな亀裂のなかに潜んで、蟋蟀が懸命に鳴いている。【鑑賞】土や草木が覆い尽くされた都会の路上で、舗装の割れ目というごくわずかな隙間に生を見出し、声を震わせる虫の姿を描いています。人間もまた大都市の片隅で懸命に生きているという、波郷らしい生活感情と哀愁が滲み出ています。
東京蟋蟀ビルの谷間の夜の底
中村草田男【現代語訳】そびえ立つ高層ビルの谷間にある夜の底で、東京の蟋蟀が小さく鳴き声を響かせている。【鑑賞】摩天楼が切り取る冷たい夜空と、その底深くに沈む街角。圧倒的な巨大構造物の狭間でかすかに響く虫の声が、都市の底知れぬ深さと、そこに生きるものの存在の小ささを象徴的に浮き彫りにしています。

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