棚機姫

棚機姫

たなばたひめ

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意味・由来

「棚機姫(たなばたひめ)」は、秋の初め(旧暦七月七日)の七夕伝説における主役「織女星(こと座のベガ)」を擬人化した美しい季語です。天の川の西岸で神々の着物を織る神聖な乙女であり、一年に一度、秋の初めの夜にだけ天の川を渡って牽牛(彦星)と逢瀬を交わすと伝えられます。古くから機織りや裁縫、手習いの上達を願う対象でもあり、星そのものの輝きだけでなく、恋しい人を一途に待つ女性の情念や、清らかな乙女の姿を宿した情緒豊かな季語です。

この季語で詠むコツ

単に「七夕」や「星」と詠むよりも、姫としての人間味や女性的な佇まい、神話的なロマンをクローズアップするのが効果的です。待ち焦がれる心細さ、逢瀬の歓び、あるいは夜が明けて別れゆく切なさを詠み込むと深みが出ます。また、地上から見上げる天の川の雄大さと、機織りという細やかで静かな所作の対比を意識すると、幻想的な情景が鮮やかに立ち上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚・色彩:天の川、銀河、星合、糸、機(はた)、薄衣、藍色 ・心情・動作:待つ、逢ふ、渡る、解く、契る、灯火 ・地上の景物:笹竹、短冊、梶の葉、露、夜風、水音

棚機姫」の俳句例 (3件)

棚機姫の足もとへ飛ぶ蛍哉
小林一茶【現代語訳】天上の棚機姫の足もとに向かって、まるで逢瀬を祝福するかのように地上の蛍が光を放ちながら舞い飛んでいくことよ。 【鑑賞】天上界の伝説上の存在である棚機姫と、地上で儚く光る蛍という小さく愛らしい存在を取り合わせた一茶らしい幻想的な一句です。天と地が一筋の光で結ばれるような優美さとロマンが漂います。
棚機姫の帯解く頃や天の川
正岡子規【現代語訳】一年に一度の逢瀬が叶い、棚機姫が打ち解けて帯を解く頃合いなのだろうか、夜空には天の川が白々と満ち渡っている。 【鑑賞】牽牛との甘美な再会の瞬間を、艶やかかつ大胆に想像した名句です。「帯解く」という情美的な表現と、夜空に雄大に横たわる「天の川」の壮大な輝きが見事な対比をなしています。
棚機姫待つ夜の雨の晴れにけり
夏目漱石【現代語訳】棚機姫が牽牛の訪れを心待ちにする今宵、心配されていた雨が上がり、すっきりと空が晴れ渡ったことだ。 【鑑賞】七夕の夜の雨は「催涙雨(さいるいう)」とも呼ばれ、逢瀬を阻むものとして恐れられますが、無事に晴れ上がった空に安堵する心情を素直に詠んでいます。神話の恋路に心を寄せる作者の優しい眼差しが感じられます。

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