たかし忌
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たかし忌

たかしき

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意味・由来

「たかし忌(たかしき)」は、昭和を代表する俳人の一人である松本たかしの忌日である6月4日を指す、仲夏の季語です。松本たかし(1906~1956年)は、江戸高弟の流れを汲む能楽師の家に生まれましたが、病弱のため能楽師の道を断念し、高浜虚子に師事して俳句の道へと進みました。彼の作風は、能楽仕込みの格調高さと幽玄な美意識、そして独自の清澄な感覚に満ちています。50歳という若さで没した彼を偲び、その忌日は別号の「麦車」から「麦車忌(ばくしゃき)」とも呼ばれます。

この季語で詠むコツ

たかし忌を詠む際は、松本たかしが生涯愛した「鎌倉」の自然や、彼のルーツである「能楽」の静謐な世界観を背景に置くのが効果的です。また、6月初旬という季節ならではの、しっとりとした雨(梅雨の走り)や、光り輝く新緑、黄金色に実る麦畑などの色彩感を重ね合わせることで、彼の端正でノーブルな句風に寄り添う、詩情豊かな句を詠み上げることができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 地名・空間:「鎌倉」「由比ヶ浜」「能舞台」「竹林」「静寂」
  • 自然・季節:「雨」「麦の秋(麦秋)」「青葉」「風の音」
  • 能楽にまつわる言葉:「謡(うたい)」「仕舞」「能面」「笛」

たかし忌」の俳句例 (3件)

たかし忌のあかるき雨となりにけり
野澤節子【現代語訳】たかし忌の今日、降ってきた雨はどんよりと暗いものではなく、どこか清らかで明るさを帯びた雨となったことだ。【鑑賞】松本たかしの高雅で澄み切った句風を象徴するかのような「あかるき雨」。悲しみに沈むのではなく、故人の美しい魂を祝福し、優しく偲ぶような瑞々しさに満ちた名句です。
たかし忌や麦の秋なる鎌倉に
星野立子【現代語訳】たかし忌を迎えた今日、松本たかしが暮らした鎌倉の地は、麦が豊かに実り、黄金色に輝く美しい季節を迎えている。【鑑賞】たかしの別号「麦車」にも通じる「麦の秋」という季節感を、彼が愛した鎌倉の風景に重ね合わせています。初夏の乾いた光と、親しい俳友を失った寂しさが、鎌倉の情緒とともに美しく調和しています。
たかし忌の雨鎌倉の竹にのる
石田波郷【現代語訳】たかし忌の静かな雨が、鎌倉の竹の葉にそっと乗るようにして降り注いでいることよ。【鑑賞】鎌倉特有の竹林にしとしとと降る雨。その雨が竹の葉に美しく「のる」という繊細な描写が、たかしが持っていた能楽の精神や、凛とした美意識を想起させます。静寂の中で故人を深く惜しむ、情感あふれる一句です。

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