炭火恋し

炭火恋し

すみびこいし

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意味・由来

「炭火恋し(すみびこいし)」は、晩秋の朝夕などに急激に冷え込みが進んだ際、赤々と熾る炭火の温もりが無性に懐かしく、恋しく感じられる心情を表現した季語です。「火恋し(ひこいし)」の傍題(関連季語)としても扱われます。本格的な冬が到来して火鉢や囲炉裏を日常的に使う前の、季節の変わり目特有の「ふとした肌寒さ」や「人恋しさ」が、炭火という具体的な熱源への愛着を通して繊細に捉えられています。

この季語で詠むコツ

単に「寒くて火に当たりたい」という身体的な感覚だけでなく、深まる秋の哀愁や人恋しさと結びつけて詠むのがポイントです。本格的な暖房器具を出すほどではないけれど、手先や足先がふと冷えたり、夕暮れの寂しさが身にしみたりする日常の細やかな場面を切り取ると共感を呼びやすくなります。「恋し」という感情語が季語自体に含まれているため、下五などでさらに「寂し」などの主観的形容詞を重ねず、具体的な動作や情景で客観的に支えるのがコツです。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 日常の動作・情景:湯気、手焙(てあぶり)、小鍋、夕暮れ、読書、便り
  • 身体感覚の言葉:指先、かじかむ、膝、冷え、息
  • 時間・空間の言葉:山里、夜更け、窓辺、古机、黄昏

炭火恋し」の俳句例 (3件)

炭火恋し手焙の灰ならしつゝ
正岡子規【現代語訳】炭火が恋しい季節となり、手焙り火鉢の灰に火箸を入れ、ならしていることだ。 【鑑賞】肌寒さを感じて手焙り火鉢を取り出し、灰を整えながら炭火のぬくもりを待ちわびる作者の日常が描かれています。静かな所作の中に、晩秋から初冬へと向かう季節の移ろいと、病床にあっても季節の機微を愛しむ子規の穏やかな視線が感じられます。
炭火恋し夜業の指をあたゝめて
杉田久女【現代語訳】炭火の温かさが恋しくなり、夜なべ仕事で冷えた指先をかざして温めている。 【鑑賞】冷え込む夜に針仕事や書き物などの夜業(よなべ)に励む情景です。炭火のかすかな温もりに凍えそうな指先をかざす女性の姿が生き生きと浮かび上がり、寒さの鋭さと炭火の優しい赤さの対比が際立っています。
炭火恋し古き手紙を読みかへす
富安風生【現代語訳】炭火のぬくもりが恋しい夕暮れに、昔届いた古い手紙を幾度も読み返している。 【鑑賞】晩秋の冷気の中で、炭火への恋しさと過去の思い出への思慕が美しく重なり合っています。燃える火の温もりを求めると同時に、遠い日への郷愁に浸る心のあたたかさがじんわりと伝わってくる名句です。

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