片月見
autumn 時候

片月見

かたつきみ

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意味・由来 「片月見(かたつきみ)」とは、陰暦八月十五夜の「中秋の名月(芋名月)」と、九月十三夜の「後の月(栗名月)」のどちらか一方しかお月見をしないことを指します。江戸時代などの古い風習では、両方の月を拝まないことは縁起が悪く、災いをもたらす「片見月」として忌み嫌われ、十五夜を祝ったなら必ず十三夜も祝うべきとされていました。この季語には、風流を重んじる心と、片方しか見られないことへの一抹の寂しさや、どことなく後ろめたい感情が込められています。 ### この季語で詠むコツ 「片月見」を詠む際は、ただ月が綺麗だという描写にとどまらず、「片方しか見られなかった」という状況が生む、心残りや寂しさ、忙しなさ、あるいは病気などで外出できない諦めなどの「陰」の感情をにじませるのがコツです。完璧ではないことへの哀愁や、人間の思い通りにいかない日常の営みを優しくすくい取るように表現すると、深みのある句になります。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ 日常や旅の状況を示す言葉(かりそめ、旅寝、病床、独り)、心情を表す言葉(うしろめたし、わびし、なほざり、心残り)、住まいや環境を表す言葉(庵、宿、山影、格子窓)などと取り合わせると、片月見の持つ独特の寂寥感が引き立ちます。

片月見」の俳句例 (3件)

かりそめの宿にすませり片月見
久保田万太郎【現代語訳】旅先の仮の宿で、私は片月見だけで月見を済ませてしまった。【鑑賞】旅の途中の慌ただしさの中で、十五夜か十三夜の片方だけを愛でて済ませてしまった手軽さと、古来のしきたりを欠いたことに対する、どこか後ろめたいような一抹の寂しさを情緒豊かに表現しています。
病んで臥す身のうしろめたさや片月見
飯田蛇笏【現代語訳】病気で横たわっている我が身にとって、片方の月しか拝めないことは、何とも後ろめたいことだ。【鑑賞】病床にあるため、両方の月見を満たすことができない不自由さと、それに対する「片月見」という言葉の持つ忌むべきニュアンスへの心理的な不安・後ろめたさが、病人の心境としてリアルに描かれています。
片月見わが住む庵は山のかげ
正岡子規【現代語訳】片月見の夜、私の住んでいる庵は山の陰にあるため、そもそも月を見ることができないのだ。【鑑賞】片方しか月を見ない片月見の不吉さや物寂しさを、山陰の庵に住んでいて月が見えないという物理的な状況に重ね、どこか自虐的なユーモアと寂しさを漂わせた名句です。

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