霞網
autumn 天文

霞網

かすみあみ

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意味・由来

「霞網(かすみあみ)」は、秋の季語(三秋)です。渡り鳥などの小鳥を捕獲するために、山野の通り道や樹間に張り渡す、極めて細い糸で編んだ目の細かい網を指します。遠くから見ると、まるで薄い霧や「霞」が立ち込めているように見え、鳥がその存在に気づかずに飛び込んで引っかかることからこの名が付きました。かつては秋の風物詩であり、実用的な狩猟法として親しまれていましたが、野生鳥獣保護の観点から、現在では法律(鳥獣保護管理法)により一般の使用や所持が原則として禁止されています。そのため、現代の俳句においては、過去の里山の情景へのノスタルジーや、自然と人間との関わりの歴史を象徴する、哀愁を帯びた季語となっています。

この季語で詠むコツ

霞網は「目に見えにくい罠」であり、そこには「命のやり取り」という緊張感と、「秋の寂寥感」が同居しています。詠む際のコツは、網そのものの構造を細かく説明するのではなく、網を取り巻く環境(冷たい山風、遮られる光、夕暮れの早さ)や、鳥の微細な動き(羽ばたき、すり抜ける影)、人間の気配などを対比させることです。現在では見かけることの少なくなった光景だからこそ、記憶の中の映像を呼び起こすように、静寂や張り詰めた空気を写生することがポイントとなります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 鳥や自然の動き:小鳥、羽音、もがく、すり抜ける、こぼるる
  • 時間や光景:夕暮れ、日暮る、薄光、山路、冷気、木の間
  • 感情や雰囲気:はかなし、無常、物寂し、忍びやか、かすか

霞網」の俳句例 (3件)

霞網かからぬ鳥の行衛かな
正岡子規【現代語訳】目の細かな霞網に引っかかることなく、すり抜けて飛んでいった小鳥は、一体どこへ向かっていくのだろうか。 【鑑賞】網という死の罠を運良く逃れた鳥の行方を、安堵とともに行く末を案じるようなまなざしで見送っています。捕らえられた鳥の悲哀ではなく、逃れた鳥の命の躍動や行方に焦点を当てたことで、秋の空の広がりや寂寥感が際立つ名句です。
霞網一羽かかりて暮れんとす
飯田蛇笏【現代語訳】ひっそりとした山の中に張られた霞網に、たった一羽の鳥が引っかかって暴れている。そうしているうちに、あたりは静かに日が暮れようとしている。 【鑑賞】薄暮の静寂の中で、網にかかった一羽の小鳥の命の抗いと、冷淡に暮れていく自然の対比が鮮やかです。静寂と孤高の美しさを捉える蛇笏らしい、厳かで少し物悲しい秋の暮れの情景が描き出されています。
霞網張りて暮れゆく山路かな
正岡子規【現代語訳】山道に霞網を張り終えて、そのまま佇んでいると、周囲の山々がだんだんと夕闇に包まれて暮れていくことだ。 【鑑賞】鳥を待つ静かな緊張感と、秋の日の短い山路の寂しげな暮れ方が見事に調和しています。人間の営み(狩猟)が、自然の大きな時の流れの中に静かに溶け込んでいくような叙情的な一句です。

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