空閑梨
autumn 天文

空閑梨

こがなし

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意味・由来

「空閑梨(こがなし)」とは、現在の福岡県(筑後国)の空閑(こが)地方で多く栽培されていた小粒の梨のことです。果実は小さく、皮が厚くて果肉が非常に硬いのが特徴で、独特の酸味や渋味を持ちます。収穫してすぐは固くて渋いものの、貯蔵して熟させることで特有の素朴な甘みや風味が出ます。古くから日持ちのする果実として重宝され、秋の深まりとともに味わう素朴な実りとして俳諧で詠まれてきました。

この季語で詠むコツ

水分たっぷりでみずみずしい現代の一般的な梨(二十世紀梨や幸水など)とは異なり、空閑梨は「小粒」「硬さ」「渋み・酸味」「素朴な野趣」が魅力です。都会的な洗練された情景よりも、静かな山里や古びた器、素朴な旅路の風情などとよく調和します。実際に噛んだときの固い歯ごたえや、口に広がる独特の酸渋さを感覚的に描写すると、季語の持ち味がぐっと引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 触覚・味覚の言葉:噛む、渋し、酸し(すまし)、かたき(硬き)、歯ごたえ
  • 情景・場所の言葉:山路、古里、筵(むしろ)、籠、土間、古器
  • 時間・季節の言葉:秋深し、秋の日暮れ、山風、朝露

空閑梨」の俳句例 (3件)

空閑梨を噛めば渋さの残りけり
正岡子規【現代語訳】空閑梨を一口かじってみると、口の中に素朴な渋みがじわりと残ることだ。 【鑑賞】空閑梨ならではの固さと渋みを写生的に捉えた一句です。みずみずしい甘さではなく、舌に残る渋みを通じて、どこか懐かしく鄙びた秋の深まりを実感させてくれます。
空閑梨のかたきを噛みて山路かな
水原秋桜子【現代語訳】硬い空閑梨を噛みしめながら、秋の山道を進んでゆくことだ。 【鑑賞】秋の山歩きの途中で、硬い空閑梨をかじる旅のひとコマを描いています。「かたきを噛みて」という力強い触覚描写が、清々しい山の空気や歩行のリズムと心地よく響き合っています。
空閑梨の青み残せる蔕の露
飯田蛇笏【現代語訳】まだ青みが残っている空閑梨の果実の、その蔕(へた)に澄んだ秋の露が置いている。 【鑑賞】実りの時期でありながら野趣ある青さを残した空閑梨に、朝露が光る静謐な情景です。蛇笏らしい格調高い視線で、秋の清冽な大気と果実の佇まいを克明に切り取っています。

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