雁の便り
autumn 動物

雁の便り

かりのたより

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意味・由来

「雁の便り(かりのたより)」とは、秋に北方から渡ってくる渡り鳥「雁(かり)」がもたらす便り、あるいは遠方からの手紙や消息そのものを指す、非常に風情ある晩秋の季語です。 中国の漢の時代、蘇武(そぶ)という使者が匈奴(きょうど)にとらわれた際、野生の雁の足に手紙を結びつけて放ち、それが皇帝のもとに届いて救出されたという『漢書』の故事に由来します。この伝説から、雁は「便りを運ぶ鳥」とされ、「雁の便り(雁の文・雁書)」という言葉が手紙の代名詞となりました。

この季語で詠むコツ

単に「手紙が届いた」という日常の一コマを詠むだけでなく、空を渡っていく雁の姿や、その哀愁を帯びた鳴き声に、遠く離れた大切な人を思う切ない気持ちを重ね合わせるのがコツです。現代のデジタルなメッセージではなく、手書きの文字の温もりや、届くまでの時間の長さを感じさせる、どこか懐かしく情緒的な雰囲気を意識して詠むと、この季語の持つロマンチックな魅力がさらに引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 動作・状態: 「待つ」「届く」「ひらく」「したためる」「更ける」
  • 景物・光: 「灯火(ともしび)」「夕月」「秋風」「薄墨(うすずみ)」
  • 心情・関係: 「遥かなり」「懐かし」「独り」「音づれ」

雁の便り」の俳句例 (3件)

雁のたよりありやなしやの夕月夜
正岡子規【現代語訳】遠いあの人からの便りはあるのだろうか、それともないのだろうか。そんな風に心待ちにしながら見上げる、切なく静かな夕方の月よ。 【鑑賞】病床にあった子規が、秋の夜空を見上げながら、遠くの友人や知人からの消息(雁の便り)を心待ちにしている心情が詠まれています。「ありやなしや」という迷いや期待が、うっすらと照る夕月夜の寂しげな光景に見事に溶け合っています。
雁の文おとすや庵の夜のともし火
与謝蕪村【現代語訳】ひっそりとした庵で夜の灯火をともしていると、まるで空を渡る雁が、手紙を落としていってくれたかのように、嬉しい便りが届いたことだ。 【鑑賞】「雁の文(雁の便り)」を、実際に空を飛ぶ雁が落としていった手紙のように見立てた、非常にロマンチックな句です。静寂に包まれた夜の庵にぽつりと灯る明かりと、そこに届いた温かい便りの存在感が、蕪村らしい絵画的な構成美で描かれています。
雁の文よめば夕日のさしにけり
小林一茶【現代語訳】届いた便りを読んでいると、ちょうど窓からあたたかな夕日が差し込んできて、手元を優しく照らしてくれたことよ。 【鑑賞】秋の夕暮れ時、静かに手紙を読みふけっている瞬間の、光と心の動きを捉えた一首です。差し込んできた夕日の温もりは、まるで手紙の送り主の温かい心そのものがそこにあるかのように感じさせ、一茶らしい素朴で深い叙情が伝わってきます。

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