雁の涙
autumn 動物

雁の涙

かりのなみだ

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意味・由来

「雁の涙(かりのなみだ)」は、秋に北方から渡ってくる雁(かり・がん)が流す涙、あるいはその哀愁を帯びた悲しげな鳴き声を涙に見立てた、晩秋の風情あふれる情緒豊かな季語です。古典文学において、雁は遠く離れた地を結ぶ使者や、故郷を思い出させる象徴として詠まれてきました。その雁が夜空を渡る気配や、秋の夜に静かに降る微細な露、あるいはかすかな雨を「雁の涙」と表現する、和歌の伝統を引き継いだ極めて優美な見立てです。

この季語で詠むコツ

「雁の涙」は非常にロマンチックで繊細な言葉です。詠む際には、感傷だけに流されるのではなく、秋の夜の冷たい空気感や、月や星の光といった「美しく澄んだ情景」と取り合わせることが大切です。目に見えない雁の涙が夜空から零れ落ちてくるような、静寂と透明感を意識して、聴覚や触覚を刺激する言葉を選ぶと効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 光や天体(「月夜」「星あかり」「月影」「澄む」)
  • 秋の夜の気配(「夜寒」「夜露」「秋の風」「小雨」)
  • 旅や孤独(「旅寝」「袖」「枕」「かすかに」)

雁の涙」の俳句例 (3件)

かりの涙や雲のなきところ
西山宗因【現代語訳】雲一つなく澄み渡った秋の夜空であるのに、どこからか水滴が落ちてくる。これは、空を渡っていく雁が流した涙なのだろうか。【鑑賞】雲のない空から降る夜露や微細な雨を、渡り鳥である雁の涙に見立てた、談林派の祖・宗因らしい機知と古典的風雅が融合した名作です。
雁の涙にやどる月夜かな
加賀千代女【現代語訳】渡っていく雁が流す悲しげな涙、その一滴一滴にまで秋の美しい月光が宿って輝いているような、まことに見事な月夜であることよ。【鑑賞】千代女の繊細な感性が光る一句です。遥か高みを行く雁の涙という目に見えないものにすら、澄み切った月の光が反射していると空想することで、月夜の美しさを極限まで引き立てています。
かりの涙に宿る月かな
松永貞徳【現代語訳】空を渡る雁の涙の中に、夜空を照らす美しい月がそっくり映り込んでいることよ。【鑑賞】貞門俳諧の祖である貞徳の句。一粒の涙という極小の存在の中に、天の月という極大の存在が宿るというダイナミックな対比が、理知的でありながらも風雅に表現されています。

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