初潮

初潮

はつしお

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意味・由来

「初潮(はつしお)」とは、陰暦八月十五夜(中秋の名月)前後に訪れる大潮のこと、または秋の訪れとともに海に満ちてくる勢いのある満潮を指す秋の季語です。古来、秋の月と海水の満ち引きは密接に結びつけられて捉えられており、月の引力が最も強まるこの時期の潮は特別視されてきました。春の穏やかで霞む潮とは異なり、秋の澄み渡った空気と月光を受けて、青く澄み、力強く渚に打ち寄せる潮水のみずみずしい躍動感と厳かさが本意(本来の情趣)にあります。

この季語で詠むコツ

「初潮」を詠む際は、視覚的な海の透明感や夜の月の光、あるいは寄せては返す波の音など、五感を澄ませて描写するのが効果的です。単に「潮が満ちてきた」という報告にとどまらず、秋の気配が海に及んでいる様子や、水かさを増す海の底知れぬ力強さを切り取ると季語が生きてきます。また、夜の海や月の出と結びつけることで、荘厳で幽玄な雰囲気を醸し出すことができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

秋の透明感や夜の情景を際立たせる言葉と好相性です。

  • 月光・月影・夜の海(秋の冴えた月との親和性が非常に高い)
  • 渚・巌(いわお)・砂・湊(みなと)(満ちてくる波とぶつかる対象)
  • ひたひた・寄する・澄む(秋の潮の満ちゆく動きや清冽さを表す動詞・擬態語)

初潮」の俳句例 (3件)

初潮や月の出を待つ舟の内
正岡子規【現代語訳】秋の初潮がひたひたと満ちてくるなか、船の中で今か今かと名月の出を待っている。【鑑賞】中秋の名月と初潮の伝統的な取り合わせを、舟上の情景として写生した子規の句です。潮が満ちて水かさが増し、舟がわずかに揺れる静かな時間のなかで、これから昇ってくる秋の澄んだ月を待ちわびる作者の期待と、張り詰めた秋の夜の気配が見事に調和しています。
初潮や波立ち渡る伊勢の海
池西言水【現代語訳】秋の初潮が満ちてきて、広大な伊勢の海一面に勢いよく波が立ち渡っていることだ。【鑑賞】江戸前期の俳人・池西言水による、秋の大潮の壮大で清冽な海の景をとらえた名句です。「伊勢の海」という歌枕の持つ神聖さと広がりが、初潮の力強い満ち引きと共鳴し、秋の風が吹き渡る広大な海のダイナミズムを鮮やかに描き出しています。
初潮にひたし濡らさむ素足かな
日野草城【現代語訳】満ちてきた秋の初潮に、そっと浸して濡らしてみようとする素足であるよ。【鑑賞】初秋の海の清冽な水を感じ取る、感覚的で艶やかな近代俳句の傑作です。夏のぬるい海水とは異なり、秋の引き締まるような冷たさを湛えた波が素足に触れる瞬間のみずみずしい触覚を捉えており、「初潮」という季語の清らかさと官能美を見事に引き出しています。

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