田村草

田村草

たむらそう

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意味・由来

田村草(たむらそう)は、秋の山野や高原の日当たりのよい草原に自生するキク科タムラソウ属の多年草です。仲秋の8月から10月頃にかけて、アザミに酷似した優美な紅紫色の頭状花を咲かせます。外見はアザミとそっくりですが、決定的な違いは葉や茎に鋭い棘(とげ)がまったくないことです。そのため、アザミの持つ野性味や鋭さとは異なり、どこかふんわりとした優しげで清楚な佇まいを見せます。名の由来には、坂上田村麻呂が鈴鹿峠でこの草を愛でたという伝説や、多武峰(とうのみね)に咲いていたからなど諸説あります。

この季語で詠むコツ

「アザミに似ているが棘がない」という植物的な特徴は、そのまま句の風情に直結します。手で触れても痛くない柔らかさ、どこか親しみやすく奥ゆかしい雰囲気を捉えるのがポイントです。また、自生地が高原や山路であるため、初秋から仲秋にかけての澄み切った秋気や、山を吹き渡る爽やかな風、ふと立ち込める山の霧など、山岳特有の大気感とともに詠み込むと、紅紫の花の美しさがより際立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・高原・峠・尾根・山路(生育環境を表す山岳の言葉) ・棘なき・やさしき・楚々として(棘がない特徴を捉える描写) ・秋風・山霧・夕明り・澄む(秋の山野の大気や光を表す言葉)

田村草」の俳句例 (3件)

田村草咲きて八ヶ岳曇りけり
水原秋櫻子【現代語訳】田村草の紅紫の花が咲いて、見上げる八ヶ岳はいつの間にか曇り空になっていた。 【鑑賞】高原植物を好んで詠んだ秋櫻子による一句。八ヶ岳山麓の澄んだ秋の空気のなか、足元に優しく咲く田村草と、上空の山頂を覆い始めた灰色の雲との対比が、秋の山の変わりやすい気候と特有の寂寥感を鮮やかに描き出しています。
田村草咲きつゞきゐる尾根の道
清崎敏郎【現代語訳】田村草がずっと咲き続いている、この一本の尾根道を歩いてゆく。 【鑑賞】山登りの途上、尾根道沿いにぽつりぽつりと、しかし途切れることなく咲く田村草の姿を素直に写し取っています。棘のない柔らかな花が歩む者を励ますように咲いている情景が浮かび、静かな旅情と秋の山の開放感が心地よく伝わってきます。
田村草咲くや伊吹の風強し
角川源義【現代語訳】田村草が咲いていることだ、伊吹山を吹き抜ける風のなんと強いことか。 【鑑賞】薬草や高山植物の宝庫として知られる伊吹山を舞台にした句です。吹きつける厳しい山風に揺れながらもしっかりと咲く田村草の生命力が、短く力強い調べの中に凝縮されています。棘を持たない優しい花と、荒々しい山風の対比が鮮やかです。

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