鬼の捨子

鬼の捨子

おにのすてご

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意味・由来

「鬼の捨子(おにのすてご)」は、ヤマノイモ科の蔓性多年草「オニドコロ(鬼野老)」の熟した実(蒴果)を指す秋の季語です。オニドコロは秋になると三つの翼状の突起を持つ独特な形の実を結び、熟すと乾燥して裂け、種子を風に飛ばします。その不思議で乾いた実の形状や、親から見捨てられて藪の中にぽつんと残されたような哀愁漂う姿から「鬼が産み捨てていった子」というユーモラスでどこか切ない名がつけられました。

この季語で詠むコツ

「鬼の捨子」という言葉自体が非常に強い物語性と哀憐の響きを持っています。実のからからと乾いた音や、晩秋の風に揺れる軽さ、枯れ草に紛れるような寂しげな存在感を写生するのが基本です。名前の劇的な響きに頼りすぎず、藪や山道の情景、秋晴れの光や肌寒い風の感触など、具体的な自然描写と組み合わせることで、季語の持つ哀愁と風情が引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 自然・場所:藪(やぶ)、蔓(つる)、小道、日なた、枯草、山路
  • 様子・感覚:からから、かさこそ、乾く、揺れる、置き去り、秋風、薄日

鬼の捨子」の俳句例 (3件)

鬼の捨子藪のうしろの日なた哉
正岡子規【現代語訳】鬼の捨子が、薄暗い藪の裏手の穏やかな日だまりの中にぽつんとあることだ。 【鑑賞】「鬼の捨子」という名が持つ物寂しさと、晩秋の柔らかい「日なた」の対比が鮮やかな一句です。暗い藪の陰ではなく、ひっそりとした日だまりに佇む乾いた実を見出したところに、子規の優しい写生の眼差しが感じられます。
鬼の捨子風のまにまに乾きけり
松瀬青々【現代語訳】鬼の捨子の実が、秋風が吹き抜けるままにからからと乾いていくことだ。 【鑑賞】オニドコロの実が秋の深まりとともに水分を失い、種子を散らす準備をしていく様子を捉えています。秋風に身を任せながら乾いていく実の軽やかさと、どこか無常感漂う静けさが巧みに詠まれています。
鬼の捨子からからと鳴る日和かな
高浜年尾【現代語訳】鬼の捨子が風に揺れてからからと音を立てる、よく晴れた心地よい秋の日だ。 【鑑賞】乾燥した実が風に触れ合って「からから」と微かな音を立てる聴覚的な描写が印象的です。「日和」という穏やかな言葉を取り合わせることで、怪しげな季語の名前に反して、明るく澄んだ晩秋の一日を爽やかに描き出しています。

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