ぬかご汁

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意味・由来

「ぬかご汁」は、長芋や自然薯などの葉の付け根にできる小さな肉芽(むかご/ぬかご)を具にして仕立てた、秋の汁物(主に味噌汁やすまし汁)を指す季語です。「むかご」の俗称・方言的表現が「ぬかご」であり、俳句では音数の収まりの良さや素朴な響きから「ぬかご汁」として親しまれてきました。小粒ながらほっくりとした口当たりと野趣あふれる素朴な風味があり、山里の恵みや晩秋の家庭的な温もりを感じさせる風情豊かな季語です。

この季語で詠むコツ

ぬかご汁を詠む際は、その「小ささ」「食感」「湯気や温もり」に着目するのがポイントです。箸先でするりと逃げる小さくて丸い粒の愛嬌や、口に含んだときのほくほくとした素朴な味わい、立ちのぼる湯気と秋の冷気のコントラストなどを具体的に描写すると、臨場感がぐっと増します。また、豪華なごちそうではなく、滋味深く慎ましい山の幸であるため、日常の静かな暮らしや家族団らん、あるいは侘び住まいの情景と響き合わせるのも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・味覚・触覚・動作:「熱き」「啜る(すする)」「箸先」「ほろほろ」「煮立つ」 ・生活・情景:「山里」「暮色」「夜寒」「灯(ひ)」「古机」「土間」 ・気分・雰囲気:「滋味」「ぬくもり」「素朴」「静けさ」「慎ましさ」

ぬかご汁」の俳句例 (3件)

ぬかご汁すする音して夜なりけり
角川源義【現代語訳】熱いぬかご汁を啜る音だけが静かに響き、いつの間にか深い夜になっていたことだ。 【鑑賞】秋の夜の静寂の中で、ぬかご汁を啜る微かな日常の物音に焦点を当てています。素朴な一杯の汁物を味わう時間を通じて、秋の夜の深まりと静けさ、そして一人または家族の穏やかな時間がしみじみと伝わってくる名句です。
ぬかご汁貧しさの底温もるる
能村登四郎【現代語訳】ぬかご汁をいただくことで、貧しい暮らしの底にまでじんわりと温もりが染み渡っていく。 【鑑賞】野山で採れるぬかごを使った慎ましい食事を前に、贅沢はできずとも心と体が芯から温まる実感を詠んでいます。「貧しさの底温もるる」という力強い把握の中に、生命を支える温かい汁物への深い感謝と滋味が宿っています。
ぬかご汁熱きに舌の縮みけり
長谷川双魚【現代語訳】ぬかご汁があまりにも熱いので、思わず舌が縮み上がってしまったことだ。 【鑑賞】熱々のぬかご汁を口にした瞬間の身体反応を、ユーモアを交えて率直に捉えた一句です。「舌の縮みけり」という飾らない表現によって、秋の寒さの中でいただく汁物の熱さと美味しさ、そしてぬかごの素朴な存在感が生き生きと描かれています。

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