葛の花
autumn 植物

葛の花

くずのはな

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意味・由来\n\n葛の花(くずのはな)は、マメ科のつる性多年草であるクズが咲かせる秋の花です。クズは「秋の七草」の一つに数えられ、古くから日本人に親しまれてきました。夏の終わりから秋にかけて、赤紫色の小さな花が房状に集まり、下から上へと咲き上がります。葛は非常に生命力が強く、旺盛に伸びる大きな葉の陰に隠れるようにして花を咲かせるため、一見すると見落としがちですが、近づくとグレープのような甘酸っぱい独特の芳香が漂います。万葉の昔から愛され、根は葛粉や葛根湯の原料となるなど、人々の暮らしに深く根差してきた植物です。\n\n### この季語で詠むコツ\n\n葛の花を詠む際は、その「隠れた美しさ」や「野性味と繊細さの対比」に注目すると良いでしょう。生い茂る青葉に隠れてひっそりと咲く様子や、風に翻って葉の裏の白さと花の赤紫色が交錯する瞬間を捉えます。また、山路や荒れ地を覆い尽くす強靭な生命力の中に、ぽつりとこぼれる花の儚さや、漂う甘い「香り」に焦点を当てることで、写生に深い情緒と五感を呼び起こすことができます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n\n- 場所・風景を 表す言葉: 山路(やまじ)、古寺、廃屋、石垣、日陰\n- 動態・質感を 表す言葉: こぼれる、踏む、隠れる、露、ぬれる\n- 感覚を表す言葉: 甘き香り、赤紫、裏白(うらじろ)、風の音

葛の花」の俳句例 (3件)

葛の花ふみしだかれて色あたらし
高浜虚子【現代語訳】山道に咲く葛の花が、人や獣に踏みつけられて散り敷いているが、その踏みつぶされた花の色はかえって鮮やかで、みずみずしい新しさを放っている。【鑑賞】虚子の提唱した「客観写生」の極致を示す一句です。通常なら見過ごされるか、あるいは汚れたものとされる「踏みしだかれた花」に生命の生々しい美しさを見出しています。「色あたらし」という把握に、自然の持つ強靱な生命力と対峙する虚子の鋭い眼差しが光ります。
葛の花こぼれて石のぬれにけり
芥川龍之介【現代語訳】葛の赤紫の花がはらはらと散りこぼれて、そこにある石がしっとりと濡れていることだ。【鑑賞】大正から昭和初期の文豪であり、俳人としても優れた句を残した芥川龍之介(俳号は我鬼)による、静寂と湿度を感じさせる名句です。秋のひやりとした空気の中、濡れた石の黒と、そこに散りばめられた葛の花の赤紫色のコントラストが、一幅の絵画のような美しさを構成しています。
山国の日のあたりたる葛の花
長谷川素逝【現代語訳】山深い地方の、ある一角にだけ秋の柔らかな陽光が差し込んでおり、そこに咲く葛の花が美しく照らし出されている。【鑑賞】山国という、どこか厳しく寂しい大自然の環境の中で、ピンポイントに差し込む「日のあたりたる」光の温かさと、そこに浮かび上がる葛の花の鮮やかさが印象的なコントラストを描いています。素朴でありながらも、一瞬の光景を鮮やかに切り取った叙情豊かな写生句です。

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