毛桃
autumn 植物

毛桃

けもも

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意味・由来

「毛桃(けもも)」は、野生の桃の一種で、その名の通り果皮全体に細かい産毛がびっしりと生えているのが特徴の秋の季語です。私たちが普段目にする大ぶりで瑞々しい栽培種の桃とは異なり、果実は小ぶりで果肉も硬く、酸味が強いのが特徴です。秋の山野にひっそりと実るその姿は、素朴で、どこか寂しげな風情を漂わせ、古くから俳人たちに愛されてきました。

この季語で詠むコツ

毛桃を詠む際は、その特徴である「細かい産毛」や「小さくて硬い実」「野性味のある渋みや酸味」など、視覚や触覚、味覚を刺激する描写を意識すると良いでしょう。きれいに整えられた庭園よりも、鄙びた里山や雑木林、荒れた道端などの風景と合わせることで、この季語が持つ野生の魅力と秋の哀愁がより引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・触覚や味覚を表す言葉(「硬し」「渋し」「酸っぱし」「うぶ毛」「ざらりと」など) ・素朴な自然や風景(「野路」「谷水」「風」「石」「山路」など) ・無邪気な人間描写(「童」「子供」「手のひら」など)

毛桃」の俳句例 (3件)

毛桃もぐ童が顔のうぶ毛かな
与謝蕪村【現代語訳】毛桃をもぎ取っている子供の顔を見ると、その頬や額に細かなうぶ毛が生えているのが、毛桃のうぶ毛と重なって実に愛らしいことよ。 【鑑賞】野生の「毛桃」にびっしりと生えた産毛と、それを一生懸命にもぎ取ろうとしている子供の顔にある「うぶ毛」を重ね合わせた、蕪村ならではの繊細で絵画的な観察眼が光る名句です。秋の柔らかな光の中で、生命力に満ちた子供の健やかさと、野の果実の素朴な手触りが見事に調和しています。
毛桃落ちて水白う流るるばかりなり
芝不器男【現代語訳】野生の毛桃がぽつりと水中に落ち、その後にはただ谷川の水が白く泡を立てて流れ去るばかりである。 【鑑賞】若くして亡くなった天才俳人、芝不器男の代表作の一つです。毛桃が水に落ちた瞬間の一瞬の動的な変化と、その後に再び訪れる、ただ水が白く流れるだけの静寂な自然の対比が鮮やかです。静けさと孤独感、そして秋の冷ややかな空気感が、張り詰めた表現で捉えられています。
毛桃食うてその種のごと痩せにけり
石田波郷【現代語訳】酸っぱく硬い毛桃を齧っていると、自分の身体がまるでその小さく硬い桃の種のように、すっかり痩せ細ってしまったように感じられることだ。 【鑑賞】療養生活を送っていた波郷が、自身の病躯と、小さく渋みのある毛桃の「種」を重ね合わせて詠んだ壮絶な自己凝視の句です。毛桃を食べるという日常の行為から、己の肉体の衰えと精神の引き締まりを、毛桃の種という強烈な視覚的シンボルを用いて生々しく描き出しています。

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