橿の実
autumn 植物

橿の実

かしのみ

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意味・由来\n「橿(かし)」はブナ科コナラ属の常緑高木の総称であり、その実はいわゆる「どんぐり」の一種です。秋になると、艶やかで硬い茶色の実を結び、森や神社の境内などに静かにこぼれ落ちていきます。「どんぐり」と呼ぶよりも、「橿の実(かしのみ)」と表現することで、どこか古典的で引き締まった、静寂な雰囲気を醸し出すことができます。古くから日本の里山や社叢(鎮守の森)に深く根ざし、秋の深まりや自然の厳かさを伝える伝統的な季語として愛されてきました。\n\n### この季語で詠むコツ\n「どんぐり」という言葉が持つ可愛らしく賑やかなイメージに対し、「橿の実」は静けさや孤独、時の経過といった「静」の情景を詠むのに適しています。実が落ちる「かすかな音」、地面や水、岩に触れたときの「質感」、あるいは落ちた後の「ひっそりとした佇まい」に注目すると、味わい深い句になります。落ちるという動的な瞬間から、その後に訪れるいっそう深い静寂への変化を意識してみましょう。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 静寂や音に関する言葉(「音なき」「ひそまりたる」「しづけさ」「乾ける響き」)\n- 古びた場所や自然の背景(「巌」「古寺」「社頭」「苔路」「細江」)\n- 孤独や無常感を表す言葉(「取り残されし」「拾ふ人なき」「ただ一つ」)

橿の実」の俳句例 (3件)

橿の実やたたく音にも登らざる
与謝蕪村【現代語訳】橿の実がカチカチと何かに当たる音がしている。その音に気づいても、わざわざ木に登って実を採ろうとする者はだれもいないことだ(あるいは、実を叩き落とす音がしても、猿などは木から降りてこない)。\n【鑑賞】実が落ちる音が聞こえても、あえて動こうとしない、のんびりとした秋の一日を描いた句です。蕪村らしいユーモアと、秋の日の穏やかで少し気怠い空気感が絶妙に表現されています。
橿の実の落ちて水なき細江かな
正岡子規【現代語訳】橿の実がぽつりと落ちて、今はもう水が涸れてしまった細い入江(水路)の底に転がっていることよ。\n【鑑賞】水が干からびた細い川底に、カシの実が静かに落ちている光景です。水のない乾いた空間に落ちた実の硬い感触や、寂寥感が漂う秋の終わりの情景を、無駄のない言葉でありのままに切り取っています。
橿の実の落ちてひそまる巌かな
飯田蛇笏【現代語訳】橿の実が静かに落ちて、その周囲を包む大きな巌(岩)がさらにしんと静まり返っていることよ。\n【鑑賞】山中にある巨大な岩のそばに、カシの実がひとつ落ちた瞬間を描いています。実が落ちるというごく小さな動きと微かな音が、かえって山中の巨大な岩石の静寂と不動性を際立たせ、大自然の厳かさを引き出しています。

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