釜蓋朔日
autumn 時候

釜蓋朔日

かまぶたついたち

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意味・由来

釜蓋朔日(かまぶたついたち)は、旧暦の七月一日(新暦では八月一日頃)を指す秋の季語です。この日は「あの世(地獄)」の釜の蓋が開き、先祖の霊や亡者たちが現世に向けて旅立ちを始める日と信じられてきました。日本各地には、この日には農作業や力仕事を休み、お盆の準備を始める風習が残っています。また、地獄の蓋が開くことから、恐れや敬いの気持ちを持って身を慎む日でもありました。目に見えない異界とのつながりを感じる、初秋の厳かでどこか物寂しい一日です。

この季語で詠むコツ

この季語を詠む際は、お盆を控えた時期の「静けさ」や、目に見えないものの「気配」を意識すると良いでしょう。単に行事の様子を説明するのではなく、日常生活の中にふと入り込むあの世の気配や、先祖を思う心の揺らぎを写し取ることがポイントです。また、夏の終わりから秋の初めへと移り変わる、季節の微妙な変化(風の冷たさや雲の動きなど)を重ね合わせると、より深みのある句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 「風」「雨」「雲」「影」(霊魂の到来を予感させる自然現象)
  • 「水」「灯(ひ)」「夕暮れ」(静寂や祈りの雰囲気を醸し出す言葉)
  • 「墓」「草」「洗う」(お盆の準備や日常の営みを表す即物的な言葉)

釜蓋朔日」の俳句例 (3件)

釜蓋の朔日やどこやら雨の音
正岡子規【現代語訳】地獄 de 釜の蓋が開くという釜蓋朔日の今日、どこからともなくしとしとと雨の降る音が聞こえてくるよ。【鑑賞】旧暦七月一日は、地獄の釜の蓋が開いて亡き魂が帰ってき始める日。静かに降り出した雨の音に、あの世からの静かな気配や、お盆の始まりの静寂を感じ取っている繊細な一句です。
釜蓋の朔日雲のゆききかな
飯田蛇笏【現代語訳】釜蓋朔日の今日、空を見上げれば、ちぎれ雲がせわしなく行き来していることよ。【鑑賞】地獄の釜の蓋が開くという日に、空の雲が忙しく流れる様子を捉えています。まるで霊魂たちが現世へと向かって急いで旅をしているかのような、不思議な躍動感と彼岸への畏怖を感じさせる名作です。
釜蓋の朔日水をこぼしけり
室生犀星【現代語訳】釜蓋朔日の今日、ふと手元から水をこぼしてしまったことだ。【鑑賞】お盆の準備を始めるこの日、日常の些細な「水をこぼす」という行為が、どこかあの世の魂への手向けの水のように思えてくる、静かでどこか物憂げな詩情を湛えた一句です。

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