無花果

無花果

いちじく

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意味・由来

「無花果(いちじく)」は秋の季語です。西アジアからアラビア半島原産で、日本には江戸時代初期に薬用植物として伝来しました。外からは花が見えず、果実の中に小さな花が無数に咲くことから「無花果」の漢字が当てられています。また、1日に1個ずつ熟すことから「一熟(いちじく)」と呼ばれたとも言われます。秋に紫色や赤褐色に熟し、独特の柔らかな甘みとプチプチとした種の食感が好まれます。

この季語で詠むコツ

無花果は、果実の独特な形状(ふっくらとした雫型)、熟して先が十字に割れる様子、乳白色の樹液、そして手のひらのような大きな葉など、視覚的・触覚的な特徴が豊富です。また、どこか懐かしい庭先の光景や、女性的な官能性、命の熟成と衰えといった深みのある情緒を表現するのに適しています。果実の柔らかさや、もいだ時の香り、味覚を具体的に描写すると生きた句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚・形状:熟る(うる)、裂く、雫、紫、大葉、夕暮れ ・触覚・味覚:甘し、とろり、白き露(樹液)、もろき ・心情・情景:古庭、母、幼き日、病床、黄昏、雨だれ

無花果」の俳句例 (3件)

無花果や母のいかりのいつとけし
中村汀女【現代語訳】無花果の実を見ていると、かつて母が立腹していたのが、いつの間にか和らいでいた幼い日の記憶が思い出される。【鑑賞】熟れると柔らかくほどける無花果の質感と、母の怒りがいつしか静まり優しい表情に戻っていた記憶とを取り合わせています。甘酸っぱく懐かしい母との情愛が鮮やかに描かれています。
無花果の熟るるを待ちて通ひけり
正岡子規【現代語訳】無花果の実が甘く熟すのを心待ちにしながら、日参するようにその場所へ通ったことだ。【鑑賞】無花果の実が日ごとに色づき柔らかくなっていくのを観察し、食べ頃を待ちわびる作者の素直な好奇心と愛着が伝わります。日常の小さな楽しみに注がれたあたたかい眼差しが心地よい一句です。
無花果の古樹へまぎるる夕煙
飯田龍太【現代語訳】夕餉の支度などの煙が、庭にある無花果の古い大木の中へと吸い込まれ、まぎれていく。【鑑賞】秋の夕暮れ時の静けさと、人の暮らしの営みが無花果の古木と重なり合う情景です。無花果の大きく広がった葉と、たなびく煙のコントラストが、山里の哀愁と豊かな風情を醸し出しています。

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