苺の株分

苺の株分

いちごのかぶわけ

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意味・由来

「苺の株分(いちごのかぶわけ)」は仲秋から晩秋にかけての季語です。苺は初夏に実を収穫したあと、夏から秋にかけて「ランナー」と呼ばれる細い走出枝を四方に伸ばし、その先に新しい子株を作ります。秋の涼しくなった頃(9月中旬〜10月頃)、この子株を親株から切り離して掘り起こし、新しい畝や鉢に植え替える作業を「苺の株分」や「苺植う(いちごうう)」といいます。冬の寒さを乗り越えさせ、翌年の春から初夏にかけて甘い実をならせるための大切な農作業・園芸作業です。

この季語で詠むコツ

「苺」単体では初夏の季語ですが、「苺の株分」や「苺植う」とすると秋の季語になります。詠む際には、実の華やかさではなく、土に親しむ素朴な手仕事の情景や、翌年の実りに思いを馳せる静かな期待感を描くのがコツです。スコップを入れる土の湿り気や柔らかさ、土に触れる手の感触、秋の夕暮れの涼風など、五感を通じた生活感を具体的に描写すると詩情が深まります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 土・道具の描写: 「黒土」「畝(うね)」「移植鏝(いしょくごて)」「指先」「泥」
  • 秋の気配・時間: 「夕風」「日暮」「秋気」「小春日」「夕餉(ゆうげ)」
  • 心情・状態: 「分かつ」「託す」「小さき」「ほぐす」「待つ」

苺の株分」の俳句例 (3件)

苺の株分けて夕風の立ちにけり
正岡子規【現代語訳】苺の子株を切り分けて植え替えていると、いつの間にか心地よい秋の夕風が吹き始めてきたことだ。 【鑑賞】没頭していた株分けの作業が一息ついた瞬間に、ふと肌に触れる秋の風の涼しさを捉えた句です。土仕事の心地よい疲れと、秋の日の暮れ方の清々しさが素直に詠み込まれています。
苺植ゑて指のつめたくなりにけり
久保田万太郎【現代語訳】苺の苗を土に植え付けていたら、土の冷たさで指先がすっかり冷たくなってしまったことだなあ。 【鑑賞】「苺植う」は「苺の株分」と同義の傍題です。秋が深まり、冷え込んできた土の感触が指先を通して鮮明に伝わってきます。下町の暮らしや季節の移ろいに敏感だった万太郎らしい、身体感覚に根ざしたしみじみとした秀句です。
苺植う手もて手紙をひらきけり
草間時彦【現代語訳】苺の苗を植えていたその手で、届いたばかりの手紙を開封したのだった。 【鑑賞】土で汚れた手、あるいは急いで水で洗ったばかりの手で手紙を開くという、日常の何気ない動作を鮮やかに切り取っています。庭仕事の土の匂いと、届いた手紙への期待感が鮮やかに対比されている佳句です。

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