楸散る

楸散る

ひさぎちる

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意味・由来

「楸(ひさぎ)」はキササゲ(ノウゼンカズラ科)の古名で、古くはアカメガシワを指すこともありました。夏に薄黄色の花を咲かせた後、秋が深まるにつれて大きく幅の広い葉が色づき、はらはらと地面や屋根に舞い落ちます。この落葉の情景を捉えた季語が「楸散る」です。万葉の時代から親しまれてきた歴史ある木であり、その堂々とした大葉が散り敷くさまには、深まりゆく秋の寂寥感と、静まり返った澄んだ空気が色濃く漂います。

この季語で詠むコツ

楸の葉は厚みがあり大ぶりなため、風に吹かれて舞い落ちる姿や、地面や屋根に落ちるときの「かさこそ」という微かな音に確かな存在感があります。単なる落葉の風景にとどまらず、葉の大きさや質感、落ちた先のものとの対比に注目するのがコツです。また、葉を落としていく枝の寂しげな広がりや、晩秋特有の穏やかな木漏れ日、張り詰めた静寂を意識して詠み込むと、情緒豊かで奥行きのある作品になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・古建築・静寂の場(寺社、書院、石段、瓦、障子、古庭など) ・晩秋の光や風(秋日、木漏れ日、木枯らし、夕影など) ・静けさを際立たせる動詞(散り敷く、積もる、掃く、佇むなど)

楸散る」の俳句例 (3件)

楸散るや大悲の風の吹きとほり
水原秋桜子【現代語訳】楸の葉が散り落ちるなかを、仏の広大無辺な慈悲のような風が吹き抜けてゆく。【鑑賞】晩秋の境内に舞い散る楸の大きな葉に、仏の「大悲」を感じ取った格調高い一句です。落葉の寂しさだけでなく、その場を包み込む清らかで温かな精神性が美しく表現されています。
楸散る日のあたたかき瓦かな
渡辺水巴【現代語訳】楸の葉が舞い散っている。その葉が落ちかかる屋根瓦には、秋のあたたかな日差しが注いでいる。【鑑賞】晩秋の冷涼な空気の中で散る楸と、日差しを浴びて温もりを湛える瓦との対比が印象的な句です。静けさの中にほっとするような安らぎと、季節の深まりが丁寧に描かれています。
楸散る大書院なる畳かな
松根東洋城【現代語訳】庭先では楸の葉が散っている。その気配を受け止めるかのように、大書院の広々とした畳が静まり返っている。【鑑賞】格式ある寺院や武家屋敷の大書院の静謐さと、外でハラハラと散る楸の風情が見事に取り合わされています。畳の青さと静寂が、晩秋の侘び住まいを際立たせています。

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