1878年 - 1964年

松根東洋城

まつねとうようじょう

作風・特徴

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生涯・略歴

松根 東洋城(まつね とうようじょう、1878年〈明治11年〉2月25日 - 1964年〈昭和39年〉10月28日)は、俳人。本名豊次郎。位階は従四位。

代表句 (13件)

金刀比羅の祭の寄手おびただし
季語: 金刀比羅祭 (autumn)
【現代語訳】金刀比羅宮の例大祭に集まってきた参拝客や見物人の数は、実におびただしいほどに膨れ上がっている。 【鑑賞】「寄手(よせて)」という言葉を使うことで、まるでお城を攻める大軍のように、全国から群衆が金刀比羅宮の長い石段を埋め尽くして押し寄せる様子が生き生きと描写されています。庶民信仰の圧倒的な活気と熱量を引き出した表現です。
小豆打つてまたも静けき日和かな
季語: 小豆打つ (autumn)
【現代語訳】小豆を打つ作業の音が止むと、あたりには再び穏やかで静かな秋晴れの時間が流れていることだよ。 【鑑賞】乾いた小豆を叩くリズミカルな音と、それが止んだあとに広がる秋晴れの深閑とした静けさの対比が見事な一句です。長閑な農村の秋の空気感が伝わってきます。
芋の露こぼれて青き土となる
季語: 芋の露 (autumn)
【現代語訳】里芋の葉から露がぽろりとこぼれ落ち、乾いていた土を濡らして深く青みがかった色に変えた。【鑑賞】露が土に吸い込まれる一瞬の色の変化を「青き土となる」と鮮やかに描写しています。静寂に包まれた朝の畑の微細な生命の動きを捉えた繊細な視線が光ります。
鹿鳴草白きがくれの小鹿かな
季語: 鹿鳴草 (autumn)
【現代語訳】白萩の咲きこぼれる陰に、小さな鹿が隠れるように佇んでいることよ。 【鑑賞】白い鹿鳴草(白萩)の花の白さと、草陰に身を寄せる小鹿の姿を絵画的に切り取った一句です。季語の由来である「鹿」をあえて配しつつ、可憐で静謐な秋の山里の情景を鮮やかに表現しています。
頻浪草ぬれて日影のかすかなり
季語: 頻浪草 (autumn)
【現代語訳】雨や露に濡れた頻浪草に、わずかな秋の日差しがかすかに差している。【鑑賞】日陰に咲く頻浪草のしっとりとした風情を、微かな光の描写とともに捉えた一句です。雨に濡れた花びらと控えめな木漏れ日の対比が、晩秋ならではの静謐な美しさを醸し出しています。
白柿や朝日のさしし竹の籠
季語: 白柿 (autumn)
【現代語訳】竹籠に盛られた白柿に、清らかな朝の光が差し込んでいる。\n【鑑賞】竹籠という素朴な器に盛られた白柿と、そこに射し込む爽やかな秋の朝日の取り合わせが絵画のように美しい句です。白い粉をまとった柿の上品な姿と陰影が、静かで格調高い朝の空気感を醸し出しています。
月の弓射落すならん星一つ
季語: 月の弓 (autumn)
【現代語訳】張りつめた月の弓が放った矢によって、あの星が一つ射落とされるのであろうか。 【鑑賞】夜空に輝く細い月と、そのすぐ近くで今にもこぼれ落ちそうに光る一番星を鮮やかに捉えています。流星や瞬く星を「月の弓に射落とされる星」と見立てた、ロマンティシズムと幻想美に溢れた一句です。
妻越舟さす竿もなくわたりけり
季語: 妻越舟 (autumn)
【現代語訳】妻越舟は川底を突く竿さえも持たず、ただ天の川の静寂のなかを渡っていった。 【鑑賞】天上の川を渡る舟だからこそ、地上の舟のように川底に竿を差すこともなく、ふわりと虚空を流れるように進んでいく神秘性を詠んでいます。超現実的な静けさと、逢瀬へ向かうひたむきな心の動きが感じられます。
土佐祭海と山との暗さかな
季語: 土佐祭 (autumn)
【現代語訳】土佐祭の夜、周囲を取り囲む海と山のなんと深く重々しい暗闇であることか。 【鑑賞】祭りの喧騒や燃え上がる松明の光を直接描くのではなく、その光の周りに広がる太平洋の海と四国の山並みの圧倒的な「暗さ」を捉えた名句です。暗闇の深さを詠むことで、かえって土佐祭の火の激しさと厳粛さが鮮やかに浮かび上がります。
七箇の池秋風わたる薄かな
季語: 七箇の池 (autumn)
【現代語訳】七箇の池のほとりを、涼やかな秋風が吹き抜けて薄の穂を揺らしている。 【鑑賞】水辺に群れ咲く薄が秋風に吹かれて波打つ様子を描写し、嵯峨野の侘びた秋の情緒を際立たせています。池の水の静けさと風にそよぐ植物の動きの対比が鮮やかな名句です。
鯊の口引張つて針はづしけり
季語: (autumn)
【現代語訳】釣り上げたハゼの口をぐっと引っ張るようにして、釣り針を外したことだ。 【鑑賞】釣魚としてのハゼの特徴を的確に捉えた写生句です。ハゼは貪欲に餌を飲み込むため針が深く刺さりやすく、大きな口を引っ張って外す動作にはユーモラスさと釣りの臨場感があふれています。
楸散る大書院なる畳かな
季語: 楸散る (autumn)
【現代語訳】庭先では楸の葉が散っている。その気配を受け止めるかのように、大書院の広々とした畳が静まり返っている。【鑑賞】格式ある寺院や武家屋敷の大書院の静謐さと、外でハラハラと散る楸の風情が見事に取り合わされています。畳の青さと静寂が、晩秋の侘び住まいを際立たせています。
肥前烏鳴いて筑紫の秋深し
季語: 肥前鴉 (autumn)
【現代語訳】肥前鴉(カササギ)が甲高く鳴き交わし、ここ筑紫の平野にも秋の深まりがしみじみと感じられる。 【鑑賞】カササギの特異な鳴き声が、九州・筑紫平野の乾いた秋空に響き渡る情景を捉えた句です。肥前鴉という地域性のある季語を用いることで、土地の歴史や風土の広大さを静かに滲み出させています。
松根東洋城(まつねとうようじょう)の生涯と代表的な名句 | 俳句びと歳時記WEB | 俳句びと