冬を待つ
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意味・由来

「冬を待つ」は、晩秋のころ、やがて訪れる本格的な冬の寒さに備えつつ、静かにその到来を心待ちにする(あるいは覚悟する)人間の心持ちを表す季語です。ただ単にカレンダー上の季節が変わるのを待つのではなく、障子を張り替えたり、防寒用の衣服や暖房器具を準備したりする、冬を迎えるための暮らしの営みの中に漂う、少し張り詰めたような、しかし落ち着いた静けさを伴う情調がこの季語の真髄です。去りゆく秋を惜しむ気持ちと、新しい季節を迎える静かな高揚感が混ざり合っています。

この季語で詠むコツ

この季語で詠む際は、ただ「寒い」「待ち遠しい」と直接的な感情を表現するのではなく、冬の準備に伴う具体的な行動や、身の回りのささやかな変化を捉えるのがコツです。例えば、家の中の音、光、空気の冷たさ、あるいは温かい飲み物や衣服の感触など、五感を刺激する具体的な事物を配置することで、「冬を待つ」という内省的な心理がより鮮明に描き出されます。静けさや、少しずつ縮こまっていく生活の気配を意識してみましょう。

相性のいい言葉・取り合わせ

身の回りの冬支度に関する言葉(障子、火、炭、外套、灯火、お茶など)や、静けさを演出する言葉(静寂、日暮れ、音、影、白、心など)と相性が良いです。また、「~の音」「~の影」といった、主観を抑えた客観的な描写と組み合わせることで、読者の想像力を刺激し、より深い余韻を残すことができます。

冬を待つ」の俳句例 (3件)

冬を待つ障子を張つてしまひけり
夏目漱石【現代語訳】冬の到来を待つばかりとなった晩秋、部屋の障子をすべて新しく張り終えたことである。 【鑑賞】障子の張り替えという具体的な冬支度の行為を通して、冬を迎える準備が整ったという満足感と、これから訪れる厳しい寒さに対する静かな覚悟が、すっきりとした表現の中に描写されています。新しくなった真っ白な障子が、来たるべき冬の光を予感させます。
炭を挽く音ひびき合ひ冬を待つ
飯田蛇笏【現代語訳】暖房用の炭を切り揃える音が山里に響き合うなか、人々の生活は静かに冬の訪れを待っている。 【鑑賞】冬に備えて炭を挽く(切る)音が、晩秋の張り詰めた澄んだ空気の中に響く様子を捉えています。聴覚を通じて冬支度の実感が迫り、山里の暮らしにおける冬への備えの真剣さと、どこか温かみのある生活の営みが伝わってくる名句です。
冬を待つ心にしづむ薬かな
高浜虚子【現代語訳】冬の訪れを静かに待つ私の心の中に、服用した薬がじわじわとしみ込んで落ち着いていく感覚がある。 【鑑賞】冬という万物が静まり返る季節を前にして、薬を飲むという日常のささやかな行為が、自己の内面を見つめ直す静謐な時間へとつながっています。肉体にしみ込む薬の感覚と、精神が冬という季節に向かって沈潜していく様子が見事に重ね合わされています。

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