雨の月

雨の月

あめのつき

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意味・由来

「雨の月(あめのつき)」は、中秋の名月(陰暦八月十五夜)の夜に雨が降り、月が見えない様子を指す季語です。同義語に「雨月(うげつ)」があります。 楽しみにしていた満月が雨雲に隠れてしまうのは一見すると残念なことに思えますが、日本の美意識では「見えない月を心で想い、雨の情趣を味わう」という風流な趣として古くから愛されてきました。雨の夜の静けさやしっとりとした風情の中に、雲の向こうにあるはずの名月の輝きを重ねて味わう季語です。

この季語で詠むコツ

「月が見えなくて残念だ」という落胆にとどまらず、雨の降る夜の独特な気配や情緒を具体的に描写するのがポイントです。雨音、濡れた庭木や路地の艶、室内の柔らかな明かりなど、五感で捉えた情景を取り合わせることで、見えない月の存在感をかえって際立たせることができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 室内・暮らしの言葉:灯(あかり)、机、茶、読書、格子戸
  • 雨や水に関する言葉:雨音、雫、軒端、濡るる、水たまり
  • 情緒を表す言葉:静寂、更くる、仄か、あはれ

雨の月」の俳句例 (3件)

淋しさにまた飯くふや雨の月
小林一茶【現代語訳】名月なのに雨が降って月も見えず、あまりの寂しさに、またご飯を食べて気を紛らわせていることだよ。 【鑑賞】期待していた名月の夜に雨が降り、所在なさと寂しさに包まれる中で、思わずまた茶碗によそってご飯を食べてしまうという一茶らしい人間味とユーモアにあふれた一句です。孤独を嘆くのではなく、素朴な日常の仕草の中に名月の夜の風情をにじませています。
傘さして見上ぐる空や雨の月
正岡子規【現代語訳】雨が降る中、傘をさして名月のあるはずの夜空を見上げていることだ。 【鑑賞】雨が降っていると分かっていても、中秋の名月への未練や期待から思わず外へ出て傘越しに暗い夜空を見上げてしまう動作を素直に写生しています。雨雲の向こうに輝く月を想う心情が、簡潔な言葉の中に鮮やかに浮かび上がります。
濡れまさる草木もあはれ雨の月
夏目漱石【現代語訳】秋の雨にしっとりと濡れていく庭の草木も趣深いことだ、名月の隠れたこの雨の夜には。 【鑑賞】月が見えない代わりに、雨に打たれて色濃く艶やかに濡れる草木の美しさに目を向けた一句です。「あはれ」という言葉に、名月を愛でられない物寂しさと、雨だからこそ際立つ秋の風情への深い感動が込められています。

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