秋団扇

秋団扇

あきうちわ

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意味・由来

「秋団扇(あきうちわ)」とは、秋になってもまだ片付けられずに部屋の隅や枕元などに残されている団扇のことです。傍題には「捨団扇(すてうちわ)」「置団扇(おきうちわ)」「忘れ団扇(わすれうちわ)」などがあります。 猛暑の夏には片時も手放せなかった団扇が、秋風が吹き始めると次第に使われなくなり、やがて忘れ去られていく――そこには、移ろいゆく季節の儚さや、用済みになった物に対する哀愁、過ぎ去った夏への名残惜しさが漂います。中国の故事「班婕妤(はんしょうよ)の怨歌行」に由来する、寵愛を失った女性の境遇を重ね合わせる歴史的な背景も持っています。

この季語で詠むコツ

秋団扇を詠む際は、「使われなくなった物」としての佇まいや所在のなさを描写するのがポイントです。机の隅や畳の上にぽつんと置かれた様子、手持ち無沙汰にパタパタと弱々しく扇ぐ仕草、あるいは埃を払う道具として雑に扱われる場面などを捉えると、秋特有の寂寥感や生活感が際立ちます。団扇そのものを直接嘆くのではなく、置かれている空間の静けさや秋の風情を描き出してみましょう。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 動作・状態:置く、忘る、捨つ、埃を払ふ、手持ち無沙汰、風待つ
  • 場所・道具:枕元、机の隅、文机、畳、縁側、書棚
  • 情景・感覚:秋風、夜寒、灯影、夕暮、白絣、寂けさ

秋団扇」の俳句例 (3件)

秋団扇置所の定まらぬ
高浜虚子【現代語訳】秋の団扇は、夏のようにいつも手元にあるわけでもなく、片付けるにはまだ早く、どこに置けばよいのか定まらない。 【鑑賞】夏が終わって役目を終えつつある団扇の、なんとも言えない所在のなさを写生した名句です。季節の移り変わりによって生じる日常のちょっとした違和感や気分の揺れを、過度な感傷を交えずに的確に捉えています。
捨団扇画は名高き俊寛か
与謝蕪村【現代語訳】打ち捨てられた団扇に描かれている絵を見ると、鬼界ヶ島に一人取り残されたあの名高い俊寛僧都の姿であろうか。 【鑑賞】島に取り残された俊寛の悲哀と、秋になって用済みとなり捨て置かれた団扇の哀愁を重ね合わせた蕪村らしい絵画的でドラマチックな一句です。団扇に描かれた絵柄から一気に古典的な物語の世界へと情景を広げています。
秋団扇畳の埃払ひけり
正岡子規【現代語訳】秋の団扇を手にとって、涼を取るためではなく、畳の上のちょっとした埃を払ったことだ。 【鑑賞】涼をとるための必需品だった団扇が、秋になると畳の埃を払う雑具のように使われている日常のワンシーンを詠んでいます。病床にあった子規の細やかな観察眼と、夏の終わりを感じさせる生活の実感が平明な言葉の中ににじみ出ています。

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