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季語辞典
及川貞
俳
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及川貞
おいかわさだ
作風・特徴
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代表句 (20件)
枸杞酒に母の齢をまさりけり
季語: 枸杞酒 (autumn)
『【現代語訳】体に良いとされる枸杞酒を飲みながら、気がつけば亡き母の享年を自分の年齢が超えてしまっていることに思いを馳せている。【鑑賞】長寿や健康を願う枸杞酒を前にして、かつての母の年齢に達し、さらにそれを超えて生きている我が身の感慨を詠んでいます。しみじみとした老いの自覚と、亡き母への追慕が重なる深い味わいのある作品です。』
御一新草夕風わたる広場かな
季語: 御一新草 (autumn)
『【現代語訳】御一新草が生い茂る広場に、秋の夕風が吹き抜けていくことよ。 【鑑賞】広々とした空き地に生え広がる御一新草と、そこを吹き抜ける夕風の取り合わせが、秋ならではの寂寥感を際立たせています。草の名が持つ素朴さと、夕暮れの広場の荒涼とした美しさが響き合っています。』
伏見祭花傘紅を重ねたる
季語: 御香宮祭 (autumn)
『【現代語訳】伏見祭(御香宮祭)で担ぎ出された花傘は、鮮やかな紅色を何層にも重ねて美しく飾られている。 【鑑賞】御香宮祭の象徴である「花傘」の華麗な美しさに焦点を当てた作品です。赤や紅の鮮烈な色彩が幾重にも重なる造形美を捉え、秋の町を彩る祭りの熱気と華やぎを格調高く描き出しています。』
小浜菊日のあたりたる巌かな
季語: 小浜菊 (autumn)
『【現代語訳】冷たい風が吹く海辺の岩場に、小浜菊が咲いている。その巌に秋のやわらかな日差しが穏やかに当たっていることよ。 【鑑賞】厳しく冷ややかな海辺の岩場に、可憐に咲く小浜菊とそこに差し込む温かな木漏れ日ならぬ日差しを捉えた一句です。巌の重厚さと日差しのぬくもり、そして小浜菊の白さの対比が、晩秋の静けさと生命の美しさを際立たせています。』
さんさ踊街いつぱいに太鼓打つ
季語: さんさ踊 (autumn)
『【現代語訳】さんさ踊りの一行が、街中いっぱいに響き渡るように太鼓を力強く打ち鳴らしながら進んでいる。 【鑑賞】さんさ踊りの最大の見所である無数の太鼓の群れ。その音圧と街を埋め尽くすエネルギーを、飾らない率直な言葉でダイナミックに表現した一句です。』
青脚鴫あゆむや水のおのづから
季語: 青脚鴫 (autumn)
『【現代語訳】青脚鴫が歩いていくと、その足元から自然と水輪が広がっていくことよ。 【鑑賞】青脚鴫が細い脚を水に運ぶたび、水面が自然に応えるように波紋を作る瞬間を繊細に切り取っています。自然界の静けさと鳥の動きが一体となった、極めて優雅な視点が光ります。』
秋湿り机によりてもの書かず
季語: 秋湿り (autumn)
『【現代語訳】秋の湿り気が立ち込める部屋で、机に寄りかかりながらも筆を執ることもなく物思いに耽っている。 【鑑賞】秋霖の湿気と肌寒さが漂う室内で、机にもたれてぼんやりと過ごす作者の姿が描かれています。心身ともに物憂げに沈み込んでいく、秋ならではの静かな孤独と情緒が素直に表現されています。』
秋の麒麟草日に日に黄なる山日和
季語: 秋の麒麟草 (autumn)
『【現代語訳】秋晴れの山歩きにふさわしい日々が続く中、秋の麒麟草が日ごとに黄色さを増している。【鑑賞】穏やかに晴れ渡る秋の連日を「山日和」と捉え、その光を浴びて深まっていく花の黄色を描いています。日々の季節の移ろいと秋の深まりを、花の色の変化を通して実感させる温かみのある句です。』
秋の蝉ひまあるかぎり鳴き尽す
季語: 秋の蟬 (autumn)
『【現代語訳】秋の蝉が、残された命の時間の限りを尽くして鳴き続けている。 【鑑賞】「ひまあるかぎり」という表現に、やがて尽きる命の残り時間を惜しむかのような切実さが込められています。弱々しくとも全身全霊で命を燃やして鳴く秋の蝉への、温かくも切ない共感と敬意が感じられる一句です。』
稲刈の音のまづきこえ母ありけり
季語: 稲刈 (autumn)
『【現代語訳】田んぼの方からまず稲刈りの音が聞こえてきて、目を凝らすとそこに母の働く姿があった。 【鑑賞】姿よりも先に耳へ届いた刈り入れの音から、母の存在を捉えた温かい作品です。黙々と働く母の日常と、家族を支える労働への深い敬愛が、素朴な日常の一コマを通じて情感豊かに伝わってきます。』
蝦夷仙入梢移れば声濁る
季語: 蝦夷仙入 (autumn)
『【現代語訳】蝦夷仙入が別の梢へと飛び移ると、その鳴き声の調子が少し濁って聞こえてきた。 【鑑賞】茂みに隠れて姿の見えにくい鳥の細やかな動きを、声の変化だけで捉えた鋭い聴覚的描写が光る一句です。』
仕掛花火消えてしまへば川の音
季語: 仕掛花火 (autumn)
『【現代語訳】賑やかに輝いていた仕掛花火が燃え尽きてしまうと、闇の中でただ川のせせらぎの音だけが聞こえてくる。 【鑑賞】視覚的な光の饗宴が終わった後に立ち現れる聴覚(川の音)に焦点を当てた句です。花火の華やかさと、それが去った後の秋の夜の寂寥感が見事に対比されています。』
十六ささげ夕風もなき垂れやうぞ
季語: 十六豇豆 (autumn)
『【現代語訳】十六ささげが、夕風も吹いていないのにだらりと長く垂れ下がっていることだよ。 【鑑賞】風がない静かな夕暮れのひとときに、ただひたすら長く垂れ下がっている十六ささげの存在感を見事に捉えています。「夕風もなき」という静けさの描写によって、その細長いフォルムとどこか脱力したようなユーモラスな佇まいが際立っています。』
秋嶺の近づき易く聳ちゐたり
季語: 秋嶺 (autumn)
『【現代語訳】秋の山嶺が、まるで手で触れられそうなほど近くに感じられながら、堂々とそびえ立っている。 【鑑賞】秋の澄み切った空気によって、遠くの山がくっきりと間近に迫って見える視覚的効果を「近づき易く」という独特の言葉で巧みに言い留めた名句です。』
雨冷の暮れゆく色や酔楊妃
季語: 酔楊妃 (autumn)
『【現代語訳】冷え冷えとした秋の雨のなか、夕暮れが近づくにつれて、酔楊妃の花が次第に紅色へと深まっていくことよ。\n【鑑賞】肌寒さを感じる秋雨の薄暗がりの中で、刻一刻と紅を増していく酔楊妃の花を捉えた一句です。雨の冷たさと、酒に酔うように熱を帯びて色づく花の対比が際立ち、しっとりとした情緒を醸し出しています。』
蘇枋の実の紅きにまじる枯れぐもり
季語: 蘇枋の実 (autumn)
『【現代語訳】蘇枋の実が赤く熟れているところに、草木を枯らす晩秋の曇り空が広がっている。 【鑑賞】蘇枋の実が放つ艶やかな赤と、冬枯れを予感させる重たい曇り空との対比が見事です。季節の移ろいに対する繊細な眼差しと、晩秋の少し冷ややかな情調が美しく詠み込まれています。』
日展の彫刻の間に冷えにけり
季語: 日展 (autumn)
『【現代語訳】日展の彫刻展示室を巡っているうちに、秋の冷え込みが身にしみて感じられた。【鑑賞】広々とした彫刻室は、ブロンズや大理石などの無機質な素材が並び、絵画室とはまた異なる独特の冷気や静寂が漂います。視覚的な作品の印象と肌で感じる秋の寒冷が見事に重なり合い、空間の広がりと季感が鮮やかに伝わってきます。』
聖母生誕祭夕日の薔薇を捧げけり
季語: 聖母生誕祭 (autumn)
『【現代語訳】聖母マリアの誕生祭の夕暮れ、夕日に照り映える一輪の美しい薔薇を祭壇に捧げたことだ。\n【鑑賞】聖母を象徴する花である「薔薇」と、初秋の茜色の夕光が溶け合う情景が印象的です。一日を締めくくる静かな感謝と祈りの温かさが伝わってきます。』
寝待月まことの更けになりにけり
季語: 寝待 (autumn)
『【現代語訳】寝待の月が昇る頃となり、夜も本当に更け切ったのだなあと深く感じる。【鑑賞】十九夜の月がようやく昇ってきたのを見て、夜の深まりを実感している素直で実感のこもった句です。「まことの更け」という実感が、寝待の月の遅さと、深まりゆく秋の夜のしじまを際立たせています。』
大文字の火の消えてゆく夜汽車かな
季語: 大文字の火 (autumn)
『【現代語訳】車窓から見えていた大文字の送り火が、遠ざかるにつれて消えてゆく。その光景を私は夜汽車の中からじっと見送っている。 【鑑賞】京都を離れる夜汽車の車窓風景として大文字の火を捉えています。遠ざかり消えていく送り火の光と、夜汽車の孤独感が美しく響き合い、夏の終わりを告げる旅情が滲み出ています。』
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