秋湿り

秋湿り

あきじめり

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意味・由来

秋湿り(あきじめり)」は、秋の長雨(秋霖)が続く時期に、大気中の湿気が増して家の中の畳や障子、衣類、調度品などがしっとりと湿気を帯びる現象を指す季語です。夏の蒸し暑い湿気とは異なり、秋の冷気とともに訪れるため、どこか物憂く静かな肌触りを持っています。古くから木と紙でできた日本家屋の中で暮らす人々が、秋の深まりと季節の陰影を肌で感じ取ってきた繊細な生活感覚に基づく季語です。

この季語で詠むコツ

湿気によって物が重く感じられたり、匂いが立ち上ったり、陰影が濃くなったりする「五感(触覚・嗅覚・視覚)」の微細な変化を捉えて詠むのがコツです。単に「じめじめして不快だ」と詠むのではなく、秋ならではの静寂や落ち着き、少し寂しげな室内の情趣へと昇華させると詩情が深まります。日常のふとした動作や身近な物の手触りに焦点を当ててみましょう。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 生活・住まいの素材:畳、障子、和紙、古書、掛軸、着物、木肌
  • 五感を刺激する描写:重し、香る、沈む、黒ずむ、鈍き光、灯(ひ)
  • 心理・空間表現:物思ひ、書斎、静けさ、雨音、薄暗がり

秋湿り」の俳句例 (3件)

秋湿り机のうへに香を炷きて
杉田久女【現代語訳】秋の長雨で家の中がしっとりと湿る中、机の上にお香を焚いて心静かに過ごしている。 【鑑賞】じめじめとした秋の湿気を、お香を焚くことで雅で凛とした空間へと変えています。湿り気を帯びた空気の中だからこそ香の匂いが濃密に漂い、秋の静けさと作者の研ぎ澄まされた美意識が感じられる名句です。
秋湿り机によりてもの書かず
及川貞【現代語訳】秋の湿り気が立ち込める部屋で、机に寄りかかりながらも筆を執ることもなく物思いに耽っている。 【鑑賞】秋霖の湿気と肌寒さが漂う室内で、机にもたれてぼんやりと過ごす作者の姿が描かれています。心身ともに物憂げに沈み込んでいく、秋ならではの静かな孤独と情緒が素直に表現されています。
秋湿り畳のへりの黒きかも
桂信子【現代語訳】秋の長雨による湿り気の中で、部屋の畳の縁の黒さがことさらに際立って見えていることだ。 【鑑賞】湿り気を帯びて薄暗くなった和室の光景を、「畳の縁の黒さ」という一点の色彩・視覚描写で見事に捉えています。しっとりと落ち着いた日本家屋の陰影と、秋の深まりゆく気配を巧みに切り取った一句です。

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