千振干す

千振干す

せんぶりほす

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意味・由来

「千振(センブリ)」は、日本各地の日当たりのよい山野に自生するリンドウ科の二年草です。秋に星形の可憐な白紫色の花を咲かせます。千回振り出しても(煎じても)まだ苦味が残るということから「千振」と名付けられ、古くから胃腸薬や健胃の民間薬「当薬(とうやく)」として重宝されてきました。 開花期の秋に草全体を根ごと抜き取り、水洗いして束ね、軒先や縁側などに吊るして陰干しにする作業を「千振干す」といい、秋の生活(人事)の季語となっています。素朴な山里の生活風景や、薬草の独特な苦味、晩秋の静かな日差しを想起させる季語です。

この季語で詠むコツ

干されているセンブリそのものの形状(小さな花をつけたまま干される様子)や、それを包む秋の日差しの柔らかさ、そして「苦味」という五感に訴えかける要素を意識するのがポイントです。 薬草を干すという実用的な暮らしの営みを通じて、山里の静けさ、家族の健康を気遣う温もり、あるいは深まりゆく秋の物寂しさを丁寧にすくい取ると深みのある句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・場所・生活空間:軒端(のきば)、縁側、障子、土間、薬研(やげん)、山里 ・光・風情:秋日、夕日、うす日、日溜まり、陰(かげ)、小春日 ・感覚的な言葉:苦き香、束ねて、括りて、乾きゆく、静けさ

千振干す」の俳句例 (3件)

千振干す障子にあたる夕日かな
水原秋櫻子【現代語訳】軒先に千振が干されており、その奥の障子に晩秋のやわらかな夕日が静かに差し込んでいることだ。 【鑑賞】薬草を干す素朴な軒端の光景と、障子に映える夕日の対比が美しい一句です。医学博士でもあった秋櫻子らしい、薬草に対する親しみと澄んだ叙情が感じられます。
千振干して日暮れ早きをつくづくと
細見綾子【現代語訳】千振を干す作業をしていると、秋の日の暮れるのがいかにも早いことをしみじみと実感する。 【鑑賞】山野草を愛した細見綾子による、秋の日の短さを実感した日常の句です。千振を一本一本整えて干す静かな手仕事の中で、秋が深まり冬へと向かう季節の移ろいがしみじみと描かれています。
千振干す軒にしづけき日ざしかな
村上鬼城【現代語訳】千振が吊るされて干されている軒先に、秋の穏やかで静かな日差しが降り注いでいる。 【鑑賞】千振の干されている軒下の情景を素直に写生した一句です。薬草独特の乾いた質感と、晩秋特有の穏やかな陽だまりのコントラストが、山里や下町の静寂を際立たせています。

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