野茨の実

野茨の実

のいばらのみ

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意味・由来

「野茨の実(のいばらのみ)」は、山野や川原などの藪に自生するノイバラが、秋に赤く熟した果実のことです。初夏に咲く清楚で香りのよい白い花が散ったあと、晩秋から冬にかけて、葉を落としたトゲだらけの細い枝先に直径数ミリから1センチほどの丸い実をたくさん実らせます。漢方では「営実(えいじつ)」と呼ばれ薬用にも用いられてきました。草木が枯れ色に染まる寂しい荒野の中で、宝石のように小さく艶やかに赤らむ姿は、深まる秋の哀愁や静寂を美しく際立たせます。

この季語で詠むコツ

野茨の実は、豪華な果実ではなく、野趣にあふれた小さく素朴な風情が持ち味です。そのため、周囲の乾いた草地、川原の石原、傾きかけた秋の淡い日差しといった「寒々とした背景」や「静けさ」と対比させると、その赤さが一段と引き立ちます。トゲのある枝や乾いた梢の質感を描写したり、夕暮れの斜光、通り抜ける秋風などの光や風の動きと響き合わせたりすると、晩秋の情感が深く立ち上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・光や影(秋日、夕日、斜光、薄日、日だまり) ・場所・情景(川原、畦道、枯野、石くれ、藪、雑木林) ・色彩・質感(深紅、朱、まろやか、刺、とげ、からみあふ)

野茨の実」の俳句例 (3件)

茨の実や日ざし細そりと川原石
水原秋櫻子【現代語訳】赤く熟れた野茨の実が揺れ、秋の光が川原の石に細く頼りなげに射し込んでいる。 【鑑賞】川原の殺風景なゴロゴロとした石の上に、晩秋の淡く弱々しい日ざしが落ちています。そのかたわらで艶やかに赤らむ茨の実が繊細な美しさを添えており、秋桜子らしい絵画的な色彩感覚と澄んだ詩情が際立つ名句です。
茨の実や遠く遊べる牛のゐて
加藤楸邨【現代語訳】野茨の赤い実がみのる野原の遠くの方に、のんびりと草を食んで遊んでいる牛の姿が見えることだ。 【鑑賞】手前にある小さな茨の赤い実と、遠景の広々とした野にたたずむ牛の姿を対比させた空間の広がりが美しい一句です。秋の穏やかな日差しと、どこかのどかで澄み渡る静寂が、鮮やかな映像美として立ち上がっています。
茨の実にまた日のぬくみ戻りけり
飯田蛇笏【現代語訳】赤く色づいた茨の実に、陰っていた太陽の柔らかなぬくもりが再び戻ってきたことだ。 【鑑賞】冷え込みが厳しくなっていく秋の日のなか、ふと雲間から射し込んだ日差しの温もりを茨の実に捉えています。小さな赤い実が太陽の光を浴びてほのかに温まる瞬間を繊細に感じ取る、自然への深い洞察と慈しみが込められた作品です。

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