山蚕
spring 地理

山蚕

やまがいこ

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意味・由来

「山蚕(やまがいこ、またはやまこ)」は、野生のヤママユガ(山繭蛾)の幼虫を指す春の季語です。人間に飼育されて純白の絹糸を出す「家蚕(かさん)」に対し、山野のクヌギやコナラなどの葉を食べて育つためこの名があります。天蚕(てんさん)とも呼ばれ、その体は新緑の葉に溶け込むような鮮やかな緑色をしています。家蚕よりも野性味があり、大自然の生命力や、深山幽谷の神秘性を象徴する存在として古くから俳句に詠まれてきました。

この季語で詠むコツ

山蚕を詠む際は、その鮮烈な「緑色」や、野生ならではの「たくましい生命力」に注目すると良いでしょう。また、彼らが好むクヌギなどの瑞々しい若葉、山を濡らす春の雨、山間の一軒家の静寂など、山蚕を取り巻く環境を具体的に描写することで、独特のしっとりとした情緒や立体感が生まれます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 色彩・質感を表す言葉: 「青(あお)」「若緑(わかみどり)」「光る」「這う」
  • 自然・天候: 「櫟(くぬぎ)の葉」「春雨(はるさめ)」「木漏れ日」「山の静けさ」
  • 生活の道具: 「文机(ふづくえ)」「窓」「籠(かご)」

山蚕」の俳句例 (3件)

山蚕に雨のふる日のくらさかな
飯田蛇笏【現代語訳】山蚕が育つ山(あるいは飼育している部屋)に、しとしとと雨が降り続く日の、なんとも言えない薄暗さよ。【鑑賞】雨を吸って青さを増す山々と、その中でひっそりと息づく山蚕の緑色が、雨の日の薄暗さの中で妖しく、かつ美しく際立つ様子を捉えた名句です。静寂と湿り気を帯びた空気感が伝わってきます。
山蚕の這ひまはるなり文机
詠み人知らず【現代語訳】書斎の文机の上に、山蚕がそっと這い回っていることだ。【鑑賞】山蚕を机の上において観察している、あるいは山深い書斎に野生の山蚕が迷い込んできた様子を描いています。知的な空間である「文机」と、野生の緑色をした「山蚕」の取り合わせが新鮮で、生命の小さな動きを愛おしむ作者の眼差しが感じられます。
山蚕の這ひおくれたる一葉かな
高浜虚子【現代語訳】他の山蚕たちに這い遅れて、一枚の葉の上にぽつんと残されている山蚕がいることよ。【鑑賞】たくさんの山蚕がうごめく中で、一匹だけ取り残されたような個体に焦点を当てた写生句です。自然界の冷酷さよりも、どこかユーモラスで愛らしい山蚕の営みを、虚子らしい温かく客観的な視線で切り取っています。

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