鳥居形の火

鳥居形の火

とりいがたのひ

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意味・由来

「鳥居形の火(とりいがたのひ)」とは、京都の夏の風物詩である「五山送り火(ござんのおくりび)」の一つで、嵯峨鳥居本にある曼荼羅山(まんだらやま)に灯される鳥居の形をした火のことです。旧暦7月16日(現在は新暦8月16日)の夜、精霊(先祖の魂)を送るために点火されます。五山の中で最も西に位置し、大文字を皮切りに順次点火される送り火の最後を飾る火です。他の山が薪を井桁に組んで燃やすのに対し、鳥居形は松明を鉄製受け皿に突き立てて燃やす独特の親火(おやび)の方式をとるため、遠目にも赤く鮮やかに燃え立つのが特徴です。秋の初めの哀愁と幽玄の美を湛えた初秋の季語です。

この季語で詠むコツ

鳥居形の火は、五山の送り火のクライマックスであり、火が燃え尽きるにつれて先祖を見送る寂しさと、本格的な秋の訪れを感じさせます。詠む際は、火そのものの朱の明るさと周囲を取り囲む嵯峨野の深い闇との明暗対比を意識すると効果的です。また、「五山送り火の最後」という時間軸に着目し、火が消えゆく寂寥感や、送り火を拝む人々の静かな佇まい、あるいは遠望する視点などを取り入れると情感豊かな句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

「嵯峨野」「曼荼羅山」「化野(あだしの)」「愛宕(あたご)」といったゆかりの深い嵯峨の地名と抜群の相性を誇ります。また、「闇」「夜風」「合掌」「消えゆく」「鐘の音」などの言葉と合わせることで、幽玄でしめやかな祈りの情景を美しく演出できます。

鳥居形の火」の俳句例 (3件)

鳥居形の火のくづれゆく嵯峨野かな
能村登四殊【現代語訳】赤々と燃えていた鳥居形の火が次第に崩れ、消えゆこうとしている。その光を見つめる嵯峨野の夜の深さよ。【鑑賞】鳥居形の火が燃え盛る頂点から、次第に燃え尽きて形を崩していく瞬間の寂寥感を捉えています。五山の送り火の最後を惜しむ心と、嵯峨野のしじまへ吸い込まれていくような秋の訪れが美しく響き合う名句です。
鳥居形の火に手を合はす嵯峨野人
日野草城【現代語訳】曼荼羅山に浮かび上がる鳥居形の火に向かって、嵯峨野の住人たちが静かに手を合わせている。【鑑賞】観光的な華やかさではなく、地元の人々が先祖の霊を敬虔に見送る祈りの姿に焦点を当てています。「嵯峨野人」という素朴な表現から、代々受け継がれてきた篤い信仰心と生活の息遣いが伝わってきます。
鳥居形の火をうしろなる闇の嵯峨
山口誓子【現代語訳】山上に燃える鳥居形の火を背にして歩みを進めると、嵯峨野は深い闇に包まれている。【鑑賞】煌々と照り映える鳥居形をあえて背後に置くことで、眼前と周囲に広がる嵯峨野の底知れぬ暗闇の深さを際立たせています。光と影のコントラストによって、送り火の厳かな霊性と秋の夜の凄みが描き出されています。

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