遠花火

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意味・由来\n遠花火(とおはなび)とは、遠く離れた場所で打ち上げられている花火を眺める情景を指す季語です。俳句において「花火」は、盂蘭盆会の魂鎮めや秋風が立ち始める晩夏・初秋の行事として親しまれてきた歴史から、伝統的に「秋」の季語に分類されます。遠花火は、会場の喧騒から遠ざかった場所で見るため、光の小ささや、遅れてかすかに届く重低音、そして周囲を取り巻く静けさが際立ち、どこか儚く哀愁に満ちた情緒を醸し出します。\n\n### この季語で詠むコツ\n花火の華やかさや色彩そのものを描写するのではなく、「距離感」と「静けさ」に焦点を当てるのがコツです。光が見えてから音が遅れて届くタイムラグの感覚や、暗闇の広がり、花火を見つめている自分自身の心理状態(孤独感、郷愁、追憶など)を重ね合わせると深みが生まれます。また、会場の群衆とは対照的な「一人の時間」や「静かな日常」を描くことで、遠花火の持つ切なさがより一層引き立ちます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・感覚や距離を捉える言葉(音のおくれ、無音、かすか、小さき、闇、夜気)\n・静寂を際立たせる場所や景(窓辺、ベランダ、湾、山影、橋の上、水面)\n・内省的な感情や動作(ひとりの夜、黙す、見上ぐ、待ちたる、忘じ)

遠花火」の俳句例 (3件)

遠花火音のおくれてきたりけり
阿部みどり女【現代語訳】遠くの空に咲いた花火の音が、光よりもずいぶん遅れて響いてきたことだ。\n【鑑賞】遠花火の物理的な距離感を、光と音の時間差という誰しもが経験する実感を通して見事に描いた名句です。遅れて響く鈍く小さなたよりのような音が、かえって夜の広がりと辺りの静けさを鮮明に印象づけています。
遠花火一湾黒くたゆたへる
山口誓子【現代語訳】遠くの夜空に花火が打ち上がり、その手前に広がるひとつの湾の黒い海面がゆったりと揺れている。\n【鑑賞】遠くの一角で小さく閃く花火の光と、眼前に横たわる暗黒の海という「動と静」「明と暗」のコントラストが秀逸な一句です。視界の広大さと自然の深遠さが、無駄のない言葉によって構築されています。
遠花火ひとは皆闇抱くらし
古賀まり子【現代語訳】遠く夜空に散る花火を眺めていると、人間は誰しも心の中に暗い闇を抱えながら生きているのだと思えてくる。\n【鑑賞】華やかでありながら一瞬で消え去る遠花火を仰ぎ見る人々の姿から、人の心の奥底にある孤独や哀感へと視線を向けた心理的深みのある句です。夜空の闇と人間の心の闇が静かに響き合っています。

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